飼い主が認知症になったら:任意後見制度との組み合わせ

「任意後見契約」とは、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、予め「任意後見人」を選任することを内容とする契約のことをいいます。

任意後見人は、財産の管理や身上監護を代理します。

(1)財産の管理

将来本人の判断能力が低下しても、任意後見人が契約の締結等を代理することで、詐欺や悪徳商法等から本人の財産を守ることができます。

(2)身上監護

介護施設への入居契約、病院での入院手続き等も、任意後見人が代理することでスムーズに締結することが可能となります。

任意後見制度そのものでは、任意後見人が直接ペットの世話(散歩、エサやり、トリミングなど)をすることはできません。

なぜなら、任意後見人の役割は、上にも書いた通り、本人の「財産管理」や「身上保護(介護・医療・施設入所の契約手続き)」という法律行為に限られており、ペットの世話のような「事実行為」は職務の対象外だからです。

しかし、別の契約や仕組みを「組み合わせる(リンクさせる)」ことにより、ご自身が認知症などになった後もペットの飼育環境を守ることが可能となります。


(1)任意後見契約の特約(代理権)に組み込む

任意後見人が直接世話をすることはできませんが、「ペットの飼育業者や老犬・老猫ホームへの支払い、手続きを代理で行う権限」を任意後見契約に含めることは可能です。

権限を含めることにより、ご自身が認知症になった際、任意後見人が本人の財産から「ペットの飼育費用」や「預け先の費用」を支払うことが可能となります。

(2)任意後見の前に「見守り契約・財産管理契約」の段階で「ペットの世話をする準委任契約」を組み合わせる

任意後見契約がスタートする前段階の契約(見守り契約、財産管理契約)が発動している時期に、「ペットの世話をすること」を内容とする「準委任契約」を締結しておきます。

(3)「ペット信託」を組み合わせる

本人が認知症になったときだけでなく、万が一亡くなった後のペットの生涯まで確実にお金と行き先を遺せる仕組みを構築しておきます。

飼い主が認知症となり、ペットの世話ができなくなると、「ペット信託契約」が発動。新たな飼い主によって飼育が継続され、費用はあらかじめ財産を渡された家族等が支払います。

㋐委託者:飼い主

㋑受託者:親族、友人等

㋒受益者:実際にペットを飼育する人

㋓信託財産:ペットを飼育するのに必要な金銭等

㋔信託終了自由:ペットの死亡

「任意後見制度」だけでは、あなたが亡くなった瞬間にすべての権限が消滅し、愛犬が路頭に迷ってしまいます。そのため、以下のいずれかの方法などを組み合わせます。

(1)ペット信託

①認知症発症時:任意後見

飼い主が認知症になったら、任意後見人が飼い主の財産から、「終生飼養を約束してくれる保護団体」へ入所させる手続きをします。

②死後:ペット信託

「ペット信託契約」を締結しておくことにより、飼い主の死後も、信託財産からその施設へ、ペットの生涯にわたる飼育費が毎月自動的に支払われ続けます。

生前に「生命保険契約」を契約。死後に生命保険金を飼育費に充てる方法もあります(生命保険信託)。

㋐委託者:ペットの飼い主

㋑受託者:信託銀行、生命保険会社など

㋒受益者(受取人):信託銀行などと提携している、ペットを引き取り、飼育する公益法人など

㋓信託内容:契約者である飼い主の死亡保険金を飼育費用に充てる

(2)「死後事務委任契約」と組み合わせる

「死後事務委任契約」とは、委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む) に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約のことをいいます。

飼い主の死後、「死後事務委任契約」に基づき、ペットを事前に指定しておいた保護団体等へ送り届けます。同時に、「負担付死因贈与契約」によって、その団体にペットの生涯飼育費用を遺産から引き継ぎます。

なお、任意後見人と死後事務委任契約の受任者はそれぞれ飼い主の生前、死後と、契約が発動する局面が違うので、同一人物でも大丈夫です。


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