ペット信託:委託者に成年後見人が就任した場合

「ペット信託」とは飼い主の死亡などに備える信託契約のことをいいます。

新たな飼い主によって飼育が継続され、費用はあらかじめ財産を渡された家族等が支払います。

◎ペット信託の構成

㋐委託者:飼い主

㋑受託者:親族、友人等

㋒受益者:当初は飼い主

㋓第二受益者:実際にペットを飼育する人

㋔信託財産:ペットを飼育するのに必要な金銭等

㋕信託終了自由:ペットの死亡

信託財産は、委託者自身の固有財産とは明確に区別(分別管理)されています。

また、成年後見人の職務は「本人の利益(財産)を守ること」ですが、信託を解除することは信託目的(ペットの終生飼育)に反し、本人の意思や利益にも反するため、家庭裁判所も安易な解除を認めません。

しかし、後見人がペット信託に対する理解の無さから「この信託は本人にとって不利益である」と主張。ペット信託契約の解除に動く可能性はゼロではありません。

成年後見人に「ペット信託契約」を勝手に解除されないための対策がいくつかあります。

(1)信託契約書に「委託者および受益者は、受託者の同意がない限り解除できない」旨の条項を入れておく

信託法第164条1項は、原則として「委託者と受益者の合意」があればいつでも信託を終了できるとされています。

委託者=受益者(自益信託)の場合、後見人は委託者・受益者の双方の代理人となるため、この状態では解除権を行使できる余地が生まれてしまいます。

そこで「受託者の同意を要する」条項を入れる事により防衛します。

(2)成年後見人が就任する前に、第二受益者である「新飼い主」が新たな受益者に就任。

委託者である飼い主が認知症を発症。判断能力が低下した時点で、成年後見人が就任する前に、新飼い主が受益者となります。

委託者と受益者が別の人物になった時点で、成年後見人は信託法第164条1項を理由にペット信託契約を解除できなくなります。

(3)信託監督人または「受益者代理人」を設置する

成年後見人が「委託者=受益者」の代理人として、受託者に対して嫌がらせのような監督権を行使することを防衛します。

受益者代理人がいる場合、受益者の権利(受託者への指図など)は代理人が行うため、後見人の不当な干渉を防ぐことが可能です。

ただし、成年後見人から不当な干渉ではない、正当な理で「信託財産の状況をチェックする権利」を根拠に「信託財産が今どうなっているか?」と求められた場合、受託者はこれを拒否することはできず、説明や資料開示を行わなければなりません。

(4)「任意後見契約」を事前に併用しておく

ペット信託契約締結の際、信頼できる人(受託者と同じ人でも可能ですが、「利益相反」の見地から別人が望ましい)との間で「任意後見契約」を結んでおきます。

認知症後は、法定後見ではなくその「任意後見人」が就任するため、ペット信託を解除されるリスクを根本から回避できます。

また、

①任意後見契約発効後に就任する「任意後見監督人」:

本人の生活費や医療費、残された固有財産の管理。

②ペット信託契約の「信託監督人」:

切り離された「ペット信託財産」が、飼育費、医療費として正しく使われているかどうか管理

と、それぞれ別の立場から完全に分離され、二重にチェックしている点で、任意後見契約発効に際し、家庭裁判所から契約の有効性を疑われたりするリスクを最小限に抑えることができます。

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