[事例]子供が相続放棄。母親の遺留分は?
1、事例
㋐相談者には前夫との間に子供が1人いる
㋑2人兄弟。弟がいる。
㋑父親は既に死亡。母親はご存命。
㋒相談者は過去に母親と何度かトラブルがあり仲が悪い。絶縁状態。
㋓子供は相談者と母親の争いを見て、関わりたくないと思い、将来、相談者の遺産を相続したくないと考えている。
㋔㋓を受けて、相談者は「全財産を弟に遺贈する」旨の遺言書作成。
㋕遺言者死亡。相続人である子供は相続放棄。第二順位の相続人である母親の遺留分は?
2、遺留分に反した遺言書も有効
「遺留分」は、亡くなった方の兄弟姉妹以外の近しい関係にある法定相続人に最低限保障される遺産取得分です。
この権利は遺言によっても奪うことはできません。
しかし、遺留分を侵害する内容の遺言書でも、それをもって遺言書が無効になることはありません。
なぜなら、あくまでも「遺留分」は相続人が最低限の財産を受け取ることができる「権利」であり、遺言書自体を無効にするものではないからです。
したがって、「全財産を弟に遺贈する」旨の遺言書も有効です。
(注:この投稿では遺言能力などを理由とする遺言書自体が無効か?、は考慮しないものとする)
3、母親の遺留分の割合は?
被相続人(亡くなった方)の相続人である子供が相続放棄した結果、「最初から相続人ではなかった」とみなされます。そのため、相続権は次の順位の相続人である母親に移ります。
被相続人には配偶者がいないので、相続人は母親1人。遺留分は遺産の1/3となります。
したがって、母親は被相続人の弟(母親からしたら息子)に対し、「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
つまり、被相続人としては、せっかく「全財産を弟に遺贈する」旨の遺言書を作成したのに、よりによって絶縁している母親に遺産の1/3が渡ってしまう、意に反した結果となってしまいます。
4、相談者はどうすればよかったのか?
(1)生命保険を利用する
弟を受取人とした生命保険契約を締結します。
一般的に、受取人に指定できる範囲は、被保険者の配偶者および2親等以内の血縁者です。
兄弟姉妹は2親等なので指定できます。
その生命保険金から母親に「遺留分侵害額請求権」に相応する金銭を渡します。
(2)弟に生前贈与する
生前の内に財産を渡したい相続人に生前贈与する方法があります。
ただし、
㋐年間110万円を超えた贈与には贈与税がかかります。
㋑被相続人が亡くなる7年以内の生前贈与は、相続財産とみなされて相続税がかかってしまいます。
~関連記事~
投稿者プロフィール

- 行政書士
-
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
皆で応援し、安心して暮らせる社会を作りたい。
そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。
当事務所への「お問い合わせ欄」は「こちら」
TEL:055‐215-2201
お気軽にご相談ください。
※電話が繋がらない場合、恐れ入りますが「お問い合わせ」にてお願いします。
最新の投稿
後見、身元保証2025年12月14日[事例]相続人の中に障害で判断能力のない子供がいる場合
相続2025年12月13日甥姪と養子縁組するには
結婚、事実婚(内縁関係)2025年12月12日再婚したら子供の戸籍は?
相続2025年12月12日養子縁組すると戸籍はどうなる?




