引きこもりの子供。「親亡き後」の問題
1、8050問題
「8050問題」とは、就職氷河期や長引く不況、職場でのパワハラ等の人間関係などが原因で20代や30代の若者がひきこもりに。それが長期化し、80代の親が50代の子ども経済的に支えなくてはならない家庭が増えている社会問題のことをいいます。
「私たち(親)が死んだ後、(ひきこもりの)この子は一人で生きていけるのだろうか?」
どこの家庭でも共通している悩みだと思います。
最後まで面倒を見ることができるに越したことはありませんが、人間には寿命があり、それが叶わないことのことが多いです。
だからこそ、今の内に「親亡き後」のことを考えてあげなければなりません。
2、「親亡き後」の問題:葬儀、行政への届け出、相続鵜手続き
両親が亡くなった後、残された子供に襲い掛かる問題として、以下のものを挙げることができます。
(1)葬儀、行政への届け出
葬儀に備え、両親が生前に「死後事務委任契約」を締結しておく方法があります。
「死後事務委任契約」とは、委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む) に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約です。
遺言に記載することにより法的な拘束力を持つ事項は、相続分の指定等の相続に関する事項、遺言執行者の指定等の身分関係に関する事項など限られています。
そこで、遺言書で叶えることができない希望を叶えるために「死後事務委任契約」の締結を検討します。
(2)遺言書の作成。遺言執行者の指定
長年引きこもりで、他の兄弟姉妹と意思疎通をしていない場合、遺産分割協議などの話し合いすら成立しない可能性があります。
遺言書を作成しておけば、遺産分割協議は不要です。
遺言書の中でも「公正証書遺言」は、遺言書の中でも、「公正証書」で作成される遺言書です。
公正証書遺言は、遺言者が相続などについての自分の意思を「公証人」に口授。
証人2名の立ち合いの下、法的な効力を備えた公的な文書(公正証書)として作成してもらったものです。
証明性、有効性が高く、かつ法的な執行力をも備えてます。
その際、遺言執行者を指定しておくと有用です。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法第1012条)。
遺言執行者に選ばれた方は、執行者になることを承諾した後、すみやかに遺言内容を実現するための手続きを行わなくてはなりません(民法第1007条第1項)。
具体的には
①遺言書の検認手続き
②相続人へ就任承諾の旨と遺言の内容を通知
③金融機関へ相続が発生したことを通知
④相続財産を調査、財産目録を作成、交付
⑤相続財産の名義変更、分配手続き等
⑥執行費用・報酬の精算、終了の報告
などを行います。
3、「親亡き後」の問題:任意後見契約
「任意後見契約」とは、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、予め「任意後見人」を選任することを内容とする契約です。
任意後見人は、財産の管理や身上監護を代理します。
①財産の管理
将来本人の判断能力が低下しても、任意後見人が契約の締結等を代理することで、詐欺や悪徳商法等から本人の財産を守ることができます。
②身上監護
介護施設への入居契約、病院での入院手続き等も、任意後見人が代理することでスムーズに締結することが可能です。
引きこもりの子供は普段から人と接する機会が少ないゆえに、人と接すること、人を信頼することに恐怖を感じがちです。
将来精神疾患が進んだら猶更でしょう。
そこで、専門家などが代わって財産管理などを行います。
それも法定後見ではなく、任意後見なら信頼できる方を自由に選ぶことができます。
任意後見契約締結の際、大切なことは、
①親と引きこもりの子供が一緒に専門家と面談。任意後見人になってもらう方を選択する
②引きこもりの子供に「人と接すること」に慣れてもらうため、任意後見契約締結後、任意後見開始。財産管理を開始する前に、まずは「見守り」として定期的に連絡を取り合うことから始め、ある程度の年月をかけて、顔なじみの人間関係を形成していく。
などです。
この準備を進めていくことにより、将来親が亡くなっても、引きこもりの子供にとって「顔なじみの人」が任意後見人として財産管理などを行ってくれることになります。
焦らず、一歩一歩進めていきましょう。
なお、任意後見人と遺言執行者を兼任することは可能です。
生前、任意後見人として、財産管理や生活支援を行い、死後、遺言執行業務を遂行することにより、一貫してのサポートが可能となります。
4、「親亡き後」の問題:家族信託
㋐委託者:父親
㋑受託者:母親
㋒第二受託者:子供
㋓受益者:父親、引きこもりの子供
㋔第二受益者:引きこもり子供
㋕信託財産:預金等
第二受託者を健常な子供にすることにより、両親の死後も、引きこもりの子供のために財産を管理することができます。
なお、信託財産(上のスキームでいうと預金等)は、家族信託契約の締結により、受託者に所有権が移るので、遺産分割協議や遺言書の対象財産となりません、
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投稿者プロフィール

- 行政書士
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◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、アポスティーユ申請手続き代行、国際結婚手続き代行、在留資格「日本人の配偶者等」(配偶者ビザ)申請代行、国際相続手続き相談
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
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