死後事務委任契約:ペットの飼育に関する条項

「死後事務委任契約」とは、委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む) に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約のことをいいます。

依頼できる内容として

①葬儀、お墓の管理

②行政への届け出

③賃貸住宅の明け渡し

④医療費、施設使用料の精算などとともに

⑤ペットの飼育

があります。

遺言に記載することにより法的な拘束力を持つ事項は、相続分の指定等の相続に関する事項、遺言執行者の指定等の身分関係に関する事項など限られています。

なので、ペットの世話についての希望を遺言の付言事項に記載しても法的な拘束力はありません。

そのような希望を確実に叶えるためには、「死後事務委任契約」を結ぶ必要があります。

(1)受託者自身

死後事務委任契約の直接の相手方である受任者にペットの飼育を依頼することができるなら、契約書に詳細に具体的な飼育方法を記載しておくなどすることにより、更に安心です。

(2)動物愛護団体

動物愛護団体は、ペットの飼育に慣れている点で安心です。

委任者が生前の内に動物愛護団体との協議、同意を済ませ、契約書、同意書を交わしておき、死後に受任者がスムーズに対応できるよう、条件を整えておいた方がよいでしょう。

合わせて、団体への寄付など、飼育費用の支払い詳細についても契約で定める必要があります。

(1)預託金清算方式

契約を結ぶ際に必要な費用と報酬を預けておく方法です。

保管方法としては、別口座を開設する、信託銀行に預ける等あります。

ディメリットは、最初に高額な金銭を用意する必要がある、です。

(2)遺産清算方式

亡くなった時の財産から死後事務の費用を支払う方法です。

セットで遺言書を作成するのが特徴です。

遺言書により受任者に死後事務の費用を渡します。

メリットとして

①遺産から支払うので契約時に高額な金銭を用意する必要がない

②遺言書があるので、相続人から金銭をもらう必要がない。

ディメリットとしては、公正証書遺言の手数料がかかる、です。

(3)保険金清算方式

保険会社と生命保険契約を結んで、保険金で死後事務の費用を支払う方法です。

メリットとして、生命保険金は相続財産ではないので、相続人に気兼ねする必要がない、です。

(4)遺言書にて遺贈

遺言書にて例えば「ペット飼育費として、250万円受任者に遺贈する」と定めておきます。

ただし、相続人の遺留分など、注意が必要です。

第○条(ペット飼育の委任)

1.甲(委任者)は、甲の死亡後、甲の飼育している愛犬「ポチ」の飼育事務を乙(受任者)に委任し、乙はこれを受任する。

2.乙は、甲の愛犬を生涯にわたり誠意をもって飼育する。

第○条(飼育費用の預託)

1.甲は、本契約締結時に、愛犬の飼育費用として現金200万円を乙に預託する。乙はこれを受領し、愛犬の飼育目的にのみ使用する。

2.乙は、飼育費用の使用状況を適宜記録し、甲の相続人その他利害関係人から請求があった場合に報告する義務を負う。

第○条(報酬)

1.甲は、本契約の報酬として、現金50万円を乙に支払う

2.乙が甲の愛犬の飼育に要した実費(医療費・食費等)は前条に定めた預託金から支払う。

上記契約の成立を証するため、本契約書2通を作成し、各自署名押印の上、各1通を保有する。

※「乙(受任者)が引き取る」とありますが、乙が何らかの理由で飼育が困難になった際の備えとして「〇〇動物愛護団体に相談、同意、契約締結」旨の条項を入れてもよい

※医療費に関して①緊急時の動物病院名②ワクチン接種のスケジュールなどを盛り込んでもよい

※食費に関し、普段食べているドッグフード、おやつ代などを記載してもよい

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