成年後見人が選任していない場合の「遺留分減殺請求」:最高裁平成26年3月14日判決
1、事案、争点
◎事案
㋐夫。遺留分に反した遺言書を残して死亡。
妻はその時点で、相続があったことと、遺留分について知っていた
㋑相続人の次男が家庭裁判所に成年後見人の申し立て。
夫死亡から約1年半後に後見開始の審判と成年後見人選任審判が確定
㋒成年後見人。相続人の長男に対し「遺留分減殺請求権」を行使。訴訟提起。
◎争点
①遺留分減殺請求権は、妻が夫の死亡と遺言の内容を知ってから1年後に時効期間が満了する
②その1年後の時点で成年後見開始の審判がなされていなかったので、民法158条の「時効停止」の要件を満たしていない
2、最高裁判決
「時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において
少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは
民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は、完成しないと解するのが相当である」
3、時効満了前に「申し立て」があればよい
つまり、
①1年後の遺留分減殺請求権の時効満了時に成年後見開始の審判がなされていなかったとしても、
②時効の期間の満了前に家庭裁判所に成年後見人選任の申立てがなされ、後見開始の審判がなされてれば
③民法158条1項の類推適用により、成年後見人が就職した時から6箇月を経過するまでは時効が停止。成年後見人は遺留分減殺請求権を行使することができる。
逆に書くと、申し立てすらなされてなければ、原則通り「遺留分減殺請求権」は時効により消滅する。
ということは、次男が申し立てしていなければ、遺留分に反した遺言書通りに財産分けできた、ってことですね。
もっとも、それには妻がその時点で「相続があったこと。遺留分について知っていたこと」を立証するのが必要ですが…。
投稿者プロフィール

- 行政書士
-
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
皆で応援し、安心して暮らせる社会を作りたい。
そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。
当事務所への「お問い合わせ欄」は「こちら」
お気軽にご相談下さい。