株式譲渡による事業承継
1、株式譲渡の方法
「株式譲渡」とは、現経営者が保有する株式を後継者へ譲り渡すことをいいます。
これにより後継者は経営権を承継することになります。
株式譲渡の方法として
①生前贈与
②相続
③株式売買があります。
(1)生前贈与
贈与契約により、現経営者が後継者に対して無償で自社株式を譲り渡す方法をいいます。
生前贈与を受ける後継者に対しては、贈与税が課税されます。
「年間110万円まで」は贈与税非課税なので、少しずつ贈与する必要があります。
(2)相続
現経営者が亡くなった後に、遺言書もしくは遺産分割協議により、後継者が株式を相続(譲り受ける)することをいいます。
株式の相続税評価額によっては、後継者に対し相続税が課されることもあります。
(3)売買
現経営者等が保有する株式を対価と引き換えに譲渡する方法をいいます。
生前贈与、相続と異なり、対価として金銭などを受け取ります。
譲渡した株主が個人の場合、その売却益に対し譲渡所得税などが、譲渡した株主が法人の場合、法人税が課せられます。
2、事業承継の手法
「事業承継」の手法は、誰を後継者にするかによって分類されます。
(1)親族内事業承継
経営者の息子・娘や甥・姪などの親族を後継者にする事業承継の手法です。
◎メリット
①社内の反発を受けにくい
②後継者教育を行いやすい
◎ディメリット
①他の親族とトラブルになる可能性
②適正な人物がいるとは限らない
(2)親族外事業承継
会社の従業員や役員等、親族以外の人物を後継者にする事業承継です。
◎メリット
①引き継ぎを行いやすい
②外部から招聘できる
◎ディメリット
①株式取得費用の調達が難しい
②他の社員からの反発
(3)M&Aでの事業承継
M&Aを利用して、親族や社員でない人物に事業承継する手法です。
◎メリット
①幅広い選択肢から後継者を選べる
②売却益を得られる
◎ディメリット
①買い手が見つかるとは限らない
②仲介手数料等、費用がかかる
3、株式譲渡の手続き
(1)会社に対し株式譲渡の承認の請求
株式の種類、株式数、譲受人の後継者の氏名などを記載した「株式譲渡承認請求書」を会社へ提出
↓
(2)株式譲渡承認機関の取締役会や株主総会での承認
↓
(3)株式譲渡契約書の締結
生前贈与の場合「贈与契約書」
売買の場合、株式数、代金、支払方法、支払期日、契約解除条項などを記載した「売買契約書」
を作成。
↓
(4)株主名簿の書き換え
4、事業承継税制
「事業承継税制」とは、中小企業の事業承継において、条件を満たせば事業承継に関する贈与税や相続税の納税を猶予・免除される制度のことです。
中小企業庁が中小企業を支援するために、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)によって事業承継税制が定められています。
「事業承継税制」は、自社株の中小企業が贈与税や相続税の支払いのため資金が足りなくなり事業継続が難しくなるのを回避するための制度です。
2代目、3代目と確実に事業承継がなされる見込みがあるのなら、条件を満たした上で利用を検討する余地があります。
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投稿者プロフィール

- 行政書士
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
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