[事例]亡くなった後妻には前夫との子供がいた

子供がいない夫婦。妻が亡くなりました。

戸籍を取り寄せたところ、前夫の間に子供が1人いました。

前夫は離婚すれば配偶者ではなくなるため、相続人にはなりません。

しかし、離婚しても前夫の子供と母との親子関係は続くため、前夫の子供も相続人となります。

つまり、上の事例では、相続人は夫と前夫の子供の2名となります。

法定相続分はそれぞれ1/2となります。

(1)亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取得。前妻、前妻の子供を戸籍で確認

(2)前妻、前妻の子供の一番新しい戸籍まで辿り、現在の本籍地を確認

(3)前妻の子供の戸籍の附票を請求

そこに住民票の住所が記載されています。

令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました(広域交付)。

対象は

①本人

②配偶者

③父母、祖父母など(直系尊属)

④子、孫など(直系卑属)

前妻の子供も直系卑属なので、請求可能です。

(4)住所が分かったら手紙等送り、連絡してみましょう。

相手から返事があり、相続手続きを進めることができれば理想ですが、そうではない場合も考えておかないといけません。

一つの方法としては、遺言書を残しておけば、遺産分割協議をする必要がありませんでした。

同じ「連絡」でも遺言書の内容で済みます。格段の差です。

前夫の子供としては譲り受けたければその旨伝えればよいですし、相続放棄をしたければ、家庭裁判所にその旨の手続きをする必要があります。

また、「全財産を夫に相続させる」旨の遺言書でも、前夫の子供の遺留分(1/2×1/2=1/4)を侵害することになりますが、遺言書自体は有効です。

同じく、遺産分割協議は不要となります。

何らかの理由で再婚する際、前夫との間に子供がいたことを隠すこともあるでしょう。こういったことも有り得ます。

ちなみに、遺言書に遺言執行者を指定している場合、遺言執行者は就職後「遺言の内容を全ての相続人に通知する義務」があります(民法第1007条第2項)。

(1)自筆証書遺言を残していた場合

上にも書いた通り、遺留分に反した遺言書自体は有効です。

ただ、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。

①この検認手続きの必要書類として「相続人全員の戸籍謄本」があります。

②検認の申立てがあると、相続人に対し、裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。

③また、検認当日、家庭裁判所にて、相続人全員による立ち合いの下、検認手続きが行われます。

つまり、上の事例の場合、「前夫の子供」が父親の死亡の事実を知らないまま、家庭裁判所での検認手続きを進めるのは不可能です。

(2)公正証書遺言を残していた場合

遺言執行者を指定すれば、前夫の子供への通知義務があります。

これに対し、指定していなければ、遺言執行者の指定は義務ではないので、前夫の子供に連絡しないで、相続手続きを進めるのは不可能ではありません。

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、

①相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

②相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする

(民法第1048条)

つまり、上の事例の場合、「前夫の子供」が母親の死亡を10年間知らないままで、遺留分侵害額請求権を行使しなければ、遺留分を支払わずに乗り切ることができます。

勿論、その10年間は

㋐何らかの形で「前夫の子供」が戸籍を見て(例:パスポートの申請)母親の死亡を知ってしまうかも

㋑母親の死亡を知れば遺留分侵害額請求権を行使してくるかも

㋒㋑だけじゃなくて、母親の死亡を伝えなかったことに対する損害賠償を請求されるかも、

の「恐れ」と背中合わせです。

バレれば確実に揉めます。

確かに、遺留分の行使は「権利」で「義務」ではありません。

必ずしも相手が遺留分侵害額請求権を行使してくるとは限りません。

しかし、「万が一行使されたら」を考慮すれば、遺留分を支払いたくない「気持ち」を優先するより、法定相続分より少ない遺留分の金銭を支払ってしまった方が、紛争防止のためには良い方法です。

遺留分の金銭を支払う意思を表明する時期ですが、

①遺言書を残していないなら、遺産分割協議の場で

②遺言書を残しているなら、遺言書を見せた上で

の初期の段階の方が良いです。

その場で紛争に発展することが不安なら、専門家を介在させて説明を依頼するのも一つの方法です。

是非ご相談を。

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