法定相続人の中に認知症の方がいる場合
1、認知症の相続人がいる遺産分割協議は無効
遺産相続手続きを進めるにあたっては、原則として相続人全員による遺産分割協議が必要になります。
しかし、相続人の中に認知症等によって意思能力が無い方がいる場合は、そのままでは遺産分割協議を進めることはできません。
仮に、意思能力のない方が遺産分割協議に参加、分割協議書に署名押印(おういん)したとしても、その協議は無効です。
2、遺言書を作成しましょう
相続人の中に認知症等によって意思能力が無い方がいる場合、遺言書を作成しておくことにより、相続発生後のトラブルを防止することができます。
具体的には…。
(1)遺産分割協議書を作成しなくてもよい
遺言書があれば、相続人全員の合意がない限り、遺言書通りの財産分けとなります。
それも公正証書遺言の方が、家庭裁判所への検認手続きが不要になる上に、法律のプロである公証人が、法令等の不備がないかどうかを確認しながら作成する点で証明力が高く、有用です。
また、相続税節税に有用な
㋐「小規模宅地等の特例」
亡くなった人が自宅として使っていた土地を、配偶者か、亡くなった方と同居していた親族が相続した場合、土地の評価額を8割引きできる制度
㋑配偶者控除
配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものが1億6千万円までであれば相続税が課税されない制度
を利用するには、遺言書もしくは遺産分割協議書の提出が必要ですが、遺産分割協議書がなくても、遺言書さえあれば利用することができます。
(2)成年後見制度を利用しなくてもよい
相続人の中に認知症で意思能力が無い方がいる場合、手続きを進めるにはは、本人のために家庭裁判所に後見開始の申立てを行い、成年後見人を選任してもらうという方法があります。
選任された後見人は、本人に代わって遺産分割協議に参加。遺産分割協議書に署名押印することになります。
しかし、成年後見制度は
①家族が親族の就任を希望しても、必ずしも希望が叶うとは限らない
②専門家が就任した場合、毎月ある程度の費用(報酬)がかかる
③一度利用すると死亡するまで止めることができない
④認知症の本人の利益を守るべき立場から法定相続分を主張してくる点で親族の希望が通らない
など、使い勝手が悪い所がいくつかあります。
「成年後見制度」の利用は「義務」ではありません。
利用したければいつでも家庭裁判所に利用の申立てはできるので、できれば他に選択がない場合の「最後の手段」としてとっておきたいものです。
使わないで済むに越したことはありません。
※参考:「日本公証人連合会HP「Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか?」
3、まとめ
上にも書いた通り、遺言書を作成しておけば、相続発生後、認知症の相続人を含めた相続人全員による遺産分割協議が不要となります。
また、遺産分割協議の成立のために成年後見制度を利用すると、皮肉な事に自由な遺産分割ができなくなる結果となってしまいます。
例えば、配偶者が既に認知症を発症している方は、遺言書の作成を。
不安な方は専門家への相談も検討してみてください。
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投稿者プロフィール

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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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