民法改正:養育費の支払い確保

今回の民法改正により、養育費債権に先取特権を付与。債務名義がなくても、養育費の支払いに関し、取り決めがあれば担保権実行という形式で強制執行ができるようになりました。

 

離婚後、子供を養育する母親など、養育費請求権を有する債権者は、調停調書や判決書などの「債務名義」がなくても、「その存在を証する文書」(離婚協議書など)(民事執行法第181条1項4号)を提出することにより、債務者(元夫など)の財産の差押えの申立てが可能となりました。

これまでは、養育費が支払われない場合、裁判所に調停申立や訴訟を提起する必要がありましたが、今後このような手続が不要になるケースがあります。

差し押さえることのできる割合ですが、養育費支払い義務者の給与を差し押さえる場合、その1/2まで差し押さえることができます。 

父母が離婚の際に養育費の取り決めをした場合、先取特権によって従来よりも支払の確保ができるようになりました。

しかし、養育費を定めることは協議離婚の条件ではないことから、養育費を決めないまま協議離婚をしてしまう場合があります。

また、DVや虐待があったため、離婚時に養育費の話合いができないまま離婚しなければならない場合もあるでしょう。

そこで、今回の民法改正により、父母の協議による定めがない場合の補充的なものとして、法定養育費制度が設けられました(改正後民法第766条の3)。 

請求権者は、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行う者です。

法定養育費の額にですが「父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算出した額」とされています。

養育費に関する取り決めをするにも、養育費の額は当事者双方の収入を基礎に算出するので、義務者の収入が明らかでなければ適正な養育費の額を算出できません。

そこで、養育費請求の申立て(人事訴訟法第32条1項)がされている場合、必要があると認められるときは、家庭裁判所は当事者に対し、その収入及び試算の状況に関する情報を開示することを命ずることができる旨の制度が新設されました(改正後人事訴訟法第34条の3、改正後家事事件手続法第152条の2第1項)。 

今回の民法改正により、養育費債権に関し、債務名義がなくとも先取特権によって、情報取得手続ができるものとしました(改正後民事執行法第206条2項)。

たとえば、養育費が未払いとなっており、養育費支払い義務者(元夫など)の給与を差し押さえたいが、現在の勤務先がわからない場合、給料の支給者に関する情報を、第三者である市区町村、日本年金機構などから提供してもらうことができます。 

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