「相続土地国庫帰属制度」を利用して山林を手放す注意点
1、境界が明確でない
(Q11)
相続したものの、土地の所在について詳細はよく知らない土地があります。
公図上であれば境界の確認ができますが、このような場合も承認申請をすることができますか。
(A11)
承認申請をするためには、土地の範囲や承認申請者が認識している隣接土地との境界を現地で確認できることが必要となります。
そのため、現地の状況を確認できず、「承認申請する土地と隣接する土地との境界を明らかにする写真」や「承認申請する土地の形状を明らかにする写真」といった必須添付書類を作成することができない場合、承認申請をすることはできません。
「相続土地国庫帰属制度」における「境界」とは
①申請した土地の隣地との境界が現地で確認できること
②申請者が指示する境界が、隣接地所有者と争いがないこと
が必要です。
①については、境界標もしくは境界点を明らかにする目印があればOKです。
②については、法務局から隣地所有者に手紙を送り、異議が出なければOKです。
※参考:「法務省HP「相続土地国庫帰属制度の概要」
2、公道に接道していない
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる(民法第210条)。
山林は公道に接していない場合が多いでしょうけど、「現に」通行が妨げられていなければOKです。
3、遺産分割登記が未了である
(Q3)
相続登記が義務化されたと聞きましたが、まだ相続登記をしていません。
このような土地は相続土地国庫帰属制度の申請ができますか。
(A3)
相続登記が未了であっても、申請する土地を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によって取得したのであれば、申請することができます。
ただし、所有者であることを証する書面(戸籍事項証明書等)を添付する必要があります。
2024年(令和6年)4月1日より、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、
㋐自己のために相続の開始があったことを知り
かつ
㋑当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました。
つまり、原則として相続から3年以内に相続登記を申請しなければいけないということです。
山林の場合、未だ登記が先代のまま、のケースが多々ありますが、「相続登記の義務化」も始まりましたし、相続土地国庫帰属制度の利用とは関係なしに、直ちに着手しなければならない事項といえます。
4、山林の申請は宅地に比べ「負担金」が少ない
「相続土地国庫帰属制度」で山林を申請。認められると「負担金」を支払う必要がありますが、山林は宅地に比べ負担金の額が少ないです。
例えば、300㎡の土地ですと、山林の負担金は227700円に対し、宅地は1018000円となります。
相続したものの、使い道がなく不要な土地ならば「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討する価値があります。
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投稿者プロフィール

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◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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