[事例]米国人の夫死亡。日本と米国に不動産、預金がある

[事例]

㋐被相続人はアメリカ国籍を有し「永住者」の在留資格により、日本人配偶者と居住していた。

㋑相続財産:日本とアメリカ・カリフォルニア州に不動産、銀行預金を有している

㋒被相続人はカリフォルニア州で遺言書を作成。

内容は「全ての遺産を配偶者に与える」

(1)相続人の調査

相続人が日本人の場合は戸籍から調べられますが、被相続人が外国籍の場合には戸籍がありません。

なので、米国の被相続人の出生証明書や婚姻証明書など、被相続人との関係性が掲載されている書類を取り寄せる必要があります。

①出生証明書:

大使館や領事館で申請。ワシントンの米国国務省から取り寄せます。

②婚姻証明書:

日本で入籍していれば戸籍から可能ですが、米国で離婚後日本で再婚している可能性もあるので、米国からも取り寄せる必要があります。

(2)遺言書の効力

「遺言の方式の準拠法に関する法律」第2条により「遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有していた国の法」に従ったものであれば、遺言書は有効です。

したがって、アメリカ・カリフォルニア州の法律に合致していれば、日本でも有効な遺言書となります。

(3)遺言書の検認

判例によると、遺言書の所在地、遺言者の最後の住所地または常居所、遺産の所在地のいずれかが日本にあれば管轄を認める、とあります。

遺言者の最期の住所地が日本なので、日本の家庭裁判所で検認手続きが可能です。

(4)不動産、預金(動産)

①不動産米国の法律は一般的に「所在地法」(不動産が所在する地の法律に従う)が適用されます。

なので、被相続人が所有していた

㋐日本の不動産には日本法

㋑米国の不動産にはアメリカの州法

が適用されます。

(2)預金(動産):

被相続人の住所・居所の法律が適用されます。

なので、被相続人の住所が日本にある場合、日本の法律が適用されます。

(1)相続の準拠法

上でも書いた通り、

㋐不動産は不動産が存在するカリフォルニア州法

㋑銀行預金(動産)は、日本の民法

が準拠法となります。

(2)プロベート

アメリカの相続では、相続人間の話し合いで勝手に遺産を分配することはできず、裁判所の監督の下で、遺産の確定、負債の弁済、相続人への分配がされます。これを「プロベート」といいます。

プロベートが始まると、相続財産は一旦、裁判所により指名された「人格代表者」に帰属させ、人格代表者が負債等を管理清算し、その後残余財産を相続人等に分配することになります。

ただし、「独立遺産管理」が認められれば、プロベイトにおける売却処分手続きを簡略化、人格代表者は裁判所の監督に服さずに遺産管理ができます。

また、相続財産が166250ドル以下の場合(55425ドル以下の不動産を含む)には、プロベイトの代わりに「宣誓供述書」による手続きをすることが可能です。

相続人は、自らが財産を承継する資格があることを述べた宣誓供述書を作成。

被相続人の資産を有する銀行などの金融機関は、宣誓供述書と死亡診断書の写しの提出を受けたら、保有する資産をリリースします。

相続手続きをスムーズに進めるためには、日本の遺産については日本語を用い日本方式の遺言で、アメリカの遺産については財産所在地の州の方式で英語により、生前信託や遺言書を作成することが大切です。

それも公正証書遺言であれば、方式だけでなく、記載の内容についても公証人が確認をしてくれますし、家庭裁判所での検認も不要となります。

ただ、日本の公正証書は日本語で作成され、英語で作成することはできません。

一般的に「永住者」は日本で安定した生活ができることを求められるので、日常生活を送れる程度の日本語能力を持っている場合が多いですが、公正証書遺言の文案作成後、英訳して理解してもらうことにより、公正証書遺言の作成が可能となります。

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