事業承継と家族信託:受託者の退任
1、家族信託における事業承継
◎具体的事例
経営を長男に任せたいが、まだまだ危なっかしい
㋐委託者:父
㋑受託者:長男(指図権を含む)
㋒受益者:父
㋓信託終了:父の死亡
㋔帰属権利者:長男
①長男は「指図権付き経営権」を有しているので、父親が完全に経営権を失うことはありません。
②長男は「指図権付き経営権」を有しているので、父親が認知症を発症しても経営体制に問題はありません。
③父親は自分が元気な内は「指図権」を通じて長男に指示することができます。
◎手続き
㋐株式を信託財産とする家族信託契約を締結する場合、信託契約書の作成とともに、第三者対抗要件を取得するため、株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載することが必要となります(会社法第154条の2の2項)。
㋑信託財産にする株式が、他者への譲渡に取締役会や株主総会の許可を要する「譲渡制限株式」の場合、株式の信託化に取締役会または株主総会の承認が必要です。
2、受託者を退任させるには
後継者候補者に受託者として経営を任せてみても、経営者として適任でなかった場合、受託者を退任させる必要があります。
◎信託法が定める法定の退任事由
①信託の清算結了
②受託者である個人の死亡
③受託者が破産手続開始の決定を受けたこと
④受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと
⑤受託者の辞任
⑥受託者の解任
⑦信託行為において定めた事由
⑦の「信託行為」とは信託契約によって定めることができる退任事由のことをいいます。
◎契約条項例
受託者が株式会社甲府産業(以下、「A社」という。)を退職又はA社の役員を退任したとき
また、受託者の退任事由とセットで後継受託者(後継者)も定めておく必要があります。
3、指図権
指図権を先代経営者に設定。判断能力喪失後は受託者(後継者候補者)の単独の判断で財産管理できるようにする場合の信託契約条項例
(信託株式に係る指図権)
第〇条 信託株式に係る指図権者として以下の者を指定する。
住 所 山梨県甲府市丸の内1丁目1番1号
氏 名 甲府太郎
生年月日 昭和11年1月11日
2 信託株式に係る議決権行使の意思決定に関しては、指図権者の指図に従う
ものとする。但し、指図権者が当該議決権行使に係る株主総会開催の3日
前までに指図がない場合、受託者が自らの意思でもって議決権を行使でき
るものとする。
3 受託者は、本件信託の目的を達成するため、指図権者の指図に従い信託株
式の売却を行うことができる。
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投稿者プロフィール

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