事業承継と家族信託

(1)株式の生前贈与

現経営者から後継者へ株式を無償譲渡する方法です。

株式の評価額次第では、受け取る後継者に贈与税が課されるリスクがあります。

(2)後継者への株式売却

業績が好調な会社の場合には株式の対価が数百万、数千万と高額になるケースが多く、後継者側がそれだけの資金を用意しなければならないリスクがあります。

(3)株式の遺贈

遺言書により後継者に株式を遺贈する方法です。

現経営者が生前に後継者を育てることはできますが、死後は後継者を助けることができません。

また、株式の評価額次第では高額な相続税が課されるリスクがあります。

◎具体的事例

経営を長男に任せたいが、まだまだ危なっかしい

㋐委託者:父

㋑受託者:長男(指図権を含む)

㋒受益者:父

㋓信託終了:父の死亡

㋔帰属権利者:長男

①長男は「指図権付き経営権」を有しているので、父親が完全に経営権を失うことはありません。

②長男は「指図権付き経営権」を有しているので、父親が認知症を発症しても経営体制に問題はありません。

③父親は自分が元気な内は「指図権」を通じて長男に指示することができます。

◎手続き

㋐株式を信託財産とする家族信託契約を締結する場合、信託契約書の作成とともに、第三者対抗要件を取得するため、株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載することが必要となります(会社法第154条の2の2項)。

㋑信託財産にする株式が、他者への譲渡に取締役会や株主総会の許可を要する「譲渡制限株式」の場合、株式の信託化に取締役会または株主総会の承認が必要です。

(1)贈与税がかからない

委託者=受益者の自益信託では、現経営者が変わらず株式から生じる利益を取得することになるので、生前贈与に該当せず、贈与税がかかりません。

(2)指図権を現経営者に設定しているので、現経営者は引き続き会社の経営に携わることができます。

(3)いつでも事業承継を止めることができる。

仮に後継者が不適格であると判断した場合、家族信託契約を解除することにより、事業承継を止めることができます。

その際、株式を取り戻す、資金を投入する行為は不要です。

(4)次世代以降の後継者まで決めることができる。

遺言書では現経営者の後継者までしか指定することはできません

「事業承継税制」を使うことができません。

「事業承継税制」とは、中小企業の事業承継において、条件を満たせば事業承継に関する贈与税や相続税の納税を猶予・免除される制度のことです。

家族信託による事業承継ですと、現経営者の相続時に相続税の課税対象になるので、株式の評価額次第では多額の相続税がかかってしまいます。

~関連記事~

事業承継時に自社株の評価額を下げるには

株式を渡すには、 ①相続させる ②贈与する ③譲渡する という3つの方法がありますが、いずれも税金が発生します。

事業承継税制

「事業承継税制」とは、中小企業の事業承継において、条件を満たせば事業承継に関する贈与税や相続税の納税を猶予・免除される制度のことです。

家族信託と非上場企業の事業承継

経営者が高齢となると「認知症」のリスクが高まります。

認知症を発症し、本人の判断能力が低下していると金融機関が把握すると、 資産が凍結されます。

預金を引き出せなくなったり、自宅を売却できなくなったりします。

そこで、「認知症による資産凍結」を防ぐ目的で、親が自分の財産の管理・処分などを、信頼できる家族(子など)に託す仕組みが「家族信託」です。

山梨県、甲府市で高齢の親の生前の財産管理にお悩みの方。是非専門家にご相談を。

投稿者プロフィール

山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」行政書士
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行

山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
皆で応援し、安心して暮らせる社会を作りたい。
そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。

当事務所への「お問い合わせ欄」は「こちら」

お気軽にご相談下さい。

Follow me!