相続人が海外に居住している場合の遺産分割
1、相続人が海外に居住している場合
相続人は海外に居住していても遺産を相続することができます。
ただ…。
①銀行での手続き、不動産の名義変更(相続登記)などでは、遺産分割協議書+「印鑑証明」の提出が必要です。
②さらに、相続登記では不動産を相続した人の「住民票」の提出も必要になります。
相続人が海外に居住していて日本の住民登録を抹消している場合、これらの書類を準備することができません。
2、印鑑証明書の代わりに「サイン証明」
現地の在外公館(大使館・領事館)で「サイン証明(署名証明)」を受けることにより、自分のサインを印鑑の代わりに使用できるよう手続きをします。
サイン証明(署名証明)を受けるには、まず、遺産分割協議書を現地の在外公館に持参します。
係官の前で遺産分割協議書にサイン後、在外公館の発行する「サイン証明書」が綴じ込まれ、サインが本人のものであることが証明されます。
3、住民票の代わりに「在留証明」
現地の在外公館(大使館・領事館)で発行されます。
◎発行の要件
①日本国籍がある
②現地に3か月以上滞在、かつ現在も居住している
◎必要書類
パスポート、賃貸契約書、公共料金の請求書など滞在期間と居住地がわかるもの
※参考:「外務省HP「在留証明」
3、海外在住の相続人が帰国できない問題点
(1)対面での遺産分割協議ができない
ZOOM等を利用してテレビ電話で遺産分割を行う方法が一般的です。
ZOOMなら、画面共有のシステムを使うことにより、資料を見せながら説明をすることができる点も有用です。
(2)書類のやり取りが難しい
サイン証明書や在留証明書は、原本そのものを国際郵便で日本に送ってもらうことになりますが、どうしても時間と手間がかかってしまいます。
署名押印してもらいたい書類については、まずPDFデータに変換してメールで送信。先方に印刷してもらうことにより国際郵便を使わなくて済みます。
(3)遺産分割協議書より遺産分割協議証明書
「遺産分割協議証明書」とは「各相続人が、遺産分割協議が整ったこととその内容を証明する書類」です。
遺産分割協議で話し合い成立した内容を書き、相続人が「この内容で間違いがありません」として署名押印、中身が正しいことを証明します。
遺産分割協議書の場合、相続人全員が署名押印する必要がある上に成立した遺産分割協議の内容をすべて盛り込む必要がありますが、「遺産分割協議証明書」の場合、署名押印するのは1人ですし、「署名押印する相続人が相続する財産」についてのみ記入すれば大丈夫です。
「遺産分割協議証明書」を使えば、海外に居住している相続人だけに署名押印してもらうだけで済みます。
(4)海外の送金の問題
相続手続きが完了すると、被相続人が有していた財産を相続人間で分配することになります。
海外に居住している相続人が相続したのが現金の場合、海外送金となりますが手数料が高い上に手間がかかります。
そこで、日本に銀行口座を開設していればその口座に、開設していなければ、他の相続人が代理で受領してもらうのも一つの方法です。
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投稿者プロフィール

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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
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