尊厳死宣言公正証書と事前指示書

「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、または中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」と解されています。

近代医学は、患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方に忠実に従い、生かすべく最後まで治療を施すことが行われてきました。

しかし、延命治療に関する医療技術の進歩により、患者が植物状態になっても長年生きている実例等がきっかけとなって、単に延命を図る目的だけの治療が、果たして患者の利益になっているのか、むしろ患者を苦しめ、その尊厳を害しているのではないかという問題認識から、患者本人の意思(患者の自己決定権)を尊重するという考えが重視されるようになりました。

「尊厳死」は、現代の延命治療技術がもたらした過剰な治療を差し控え、または中止し、単なる死期の引き延ばしを止めることであって、それは許されると考えられるようになりました。

近時、我が国の医学界等でも、尊厳死の考え方を積極的に容認するようになり、また、過剰な末期治療を施されることによって近親者に物心両面から多大な負担を強いるのではないかという懸念から、自らの考えで尊厳死に関する公正証書の作成を嘱託する人も出てくるようになってきました。

「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、または中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。

日本公証人連合会HP」より

本人が自らの意思で「尊厳死」を望む場合、公証人の前でそれを宣言、公証人がこの事実を記録し公正証書を作成します。

「尊厳死宣言公正証書」の作成にはあらかじめ家族の了解が必要となります。

◎必要書類

①印鑑登録証明書と実印

②運転免許証等、本人確認書類と認印

◎公正証書作成基本手数料

㋐公証役場に支払う基本手数料11000円

㋑正本代750円(1枚につき250円、署名用紙1枚含め正本が3枚の場合)

「事前指示書」とは、ある患者や健常な人が、将来自らが判断能力を失った際、自分に行われる医療行為に対する意向を、前もって意思表示するための文書です。

内容ですが、

(1)抽象的には

①自分自身が治療の選択について自分で判断できなくなった場合に備えて

②どのような治療を受けたいか、もしくは医療処置を受けたくないか

③自分で判断ができなくなった場合、誰に今後の治療について自分の代わりに判断してもらいたいか

を、事前に明示しておくことが挙げられます。

(2)具体的には

①延命のための人工呼吸器の使用

②心臓マッサージ等、心肺蘇生

③胃ろう増設による栄養補給の可否

④鼻チューブ(経鼻からカテーテルを挿入し経管栄養材を投与する)からの栄養補給の可否

⑤点滴による水分補給

等です。

尊厳死宣言公正証書も事前指示書も、どちらも終末期医療における本人の意思表示を文書化するものですが、後者の方がより具体的で詳細なのが特徴です。

あくまでも、下の「加古川公証役場HP「尊厳死宣言公正証書」のサンプルは「尊厳死宣言公正証書」のもの。

このサンプルに事前指示書の内容を組み込むことにより、事前指示書を公正証書にしたのと同じ効果を得ることができます。

もっとも「法的効力化」といっても、残念ながら医療現場に強制させるまでの効力はありません。

しかし、日本尊厳死協会のアンケートによると「尊厳死宣言公正証書」を医師に提示した後の医師による尊厳死許容率は、9割を超えているそうです。

また、厚生労働省も、平成30年「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」により「本人の意思決定」を基本としつつ「繰り返し話し合った内容をその都度文書にまとめておき、本人、家族等と医療・ケアチームで共有することが重要である」としています。

本当は明確な法律の規定があれば一番ですが、自分の「最期」を自分で決めたい方は、元気な内に「尊厳死宣言公正証書」などにより、自身の明確な意思を表明しておきましょう。

※参考:「加古川公証役場HP「尊厳死宣言公正証書サンプル

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