[事例]遺言により「長男に相続させる」とした不動産を成年後見人が売却した場合
1、事例
◎事例
父親既に死亡。
母親から「不動産を長男に相続させる」旨の遺言を書いたところ、母親が認知症になったのを受けて、家庭裁判所への申し立てにより弁護士Aが後見人に選任されました。
数か月後、Aは家庭裁判所の許可を得て当該不動産を売却しました。
その後母親死亡。相続が開始しました。
上記不動産の売却代金を原資とする預金はどうなる?
◎相続人:長男、次男、長女
なお、遺言書には当該不動産の行き先しか記載されていない
2、東京地裁平成29年3月17日判決
長男が、当該預金を他の相続人に払い戻した銀行、他の相続人に対して損害賠償及び不当利得返還請求をした件につき、東京地裁平成29年3月17日は
①本件遺言の上記文言の明確さに照らせば、その合理的意思解釈としても、本件不動産を原告に相続させるということに尽きるものといわざるを得ない。
②よって、本件不動産以外の財産、すなわち、本件預金債権をも原告に取得させる意思であったと認めることはできない。
として、原告の請求を棄却しました。
3、遺言者の対策
(1)既に銀行の預金口座があるなら、遺言書に預金口座の行き先も記載すべきだった
もっとも、当該不動産の売却代金は不動産の形を変えたものなので「遺言書に書いた財産がない場合」に該当し、原則として、改めて遺産分割協議より、誰が相続するか決めることになります。
しかし、例えば、遺言書の記載が
㋐「A銀行 甲支店 普通預金 口座番号111111」は長男に相続させる」
㋑「B銀行 乙支店 普通預金 口座番号222222」は次男に相続させる」
㋒「C銀行 丙支店 普通預金 口座番号333333」は長女に相続させる」
で、後見人が当該不動産売却後、売却代金を「A銀行 甲支店 普通預金 口座番号111111」に入金した場合、お金の流れが明確なので、上の判例の解釈からすると、遺言書の合理的意思解釈の見地から、当該不動産の売却代金は長男が相続すると解釈する余地があるともいえます。
(2)認知症などで判断能力が低下する前に、長男と「家族信託契約」を締結しておけば、家庭裁判所に「後見人選任の申し立て」をしなくて済むので、後見人が当該不動産を売却することもなかった
その際、当該不動産を信託財産の対象にしておけば、たとえ将来売却することになっても、上の判例のように、相続人同士の争いになることもなかった。
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