[事例]知的障害のある子供がいるのに遺言書を残さなかったから…
1、事例
◎事例
㋐父親死亡(母親は既に死亡)
㋑相続人:長男、次男。次男は重度の知的障害者
㋒相続財産:賃貸マンション、預貯金
㋽遺言書を残していなかったので、長男、次男で遺産分割協議をするところ、次男は重度の知的障害者なので判断能力がなく、参加できないため、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立て。
㋔選任された成年後見人は、遺産分割協議の際、本人の財産を守る見地から「法定相続分」を主張してきたため、マンションは長男、次男の共有に。
㋕マンションの老朽化が進み、長男が大規模修繕したいと思っても、次男の財産を守る見地から成年後見人は承諾せず…。
2、どうすればよかったのか?
(1)父親が「賃貸マンションは長男に相続させる」旨、遺言書を残す。
遺言書を残していれば遺産分割協議を行わずに済みます。
また、成年後見人が付いていなければ、次男は重度の知的障害者なので遺留分を主張してきません。権利を主張しなければ遺留分は発生しません。
これで長男は次男の介護などのためにお金を使うことができますし、次男の施設入所の費用に充てるため、賃貸マンションを売却できます。
(2)負担付遺贈
次男の介護をすることを条件に長男に賃貸マンションを遺贈する
(3)家族信託
委託者&受益者:父親
受託者:長男
第二受益者:次男
信託財産:賃貸マンション
信託終了事由:父親&次男の死亡
帰属権利者:長男
3,まとめ
障害などにより判断能力を失った人の財産管理の手段として「成年後見制度」の利用があります。
しかし、成年後見制度は
①家族が親族の就任を希望しても、必ずしも希望が叶うとは限らない
②専門家が就任した場合、毎月ある程度の費用(報酬)がかかる
③一度利用すると死亡するまで止めることができない
など、使い勝手が悪い所がいくつかあります。
「成年後見制度」の利用は「義務」ではありません。
利用したければいつでも家庭裁判所に利用の申立てはできるので、できれば他に選択がない場合の「最後の手段」としてとっておきたいものです。
障害のある子供の将来、両親の死後について悩んでいる家庭は多いかと思います。生前のうちに相続について万全な準備が必要です。
悩んでいる方は是非専門家にご相談を。
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投稿者プロフィール

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