相続人が認知症の場合
1、認知症の相続人がいる問題点
(1)遺産分割協議ができない
遺言書がなければ、相続人全員の合意の下で「遺産分割協議書」を作成しなければなりませんが、認知症等で判断能力が低下していると、遺産分割協議に参加して意思表示することはできません。
遺産分割協議に参加するには、成年後見制度を利用するしかありません。
(2)相続放棄できない
同じく、認知症等で判断能力が低下すると相続放棄ができません。
2、成年後見制度を使う問題点
(1)後見人選任まで時間がかかる
相続発生後、遺産分割協議の為に家庭裁判所に後見人の選任を申し立てても、1~3カ月ほどかかってしまいます。
相続税申告の期限は10カ月。期限に間に合わない、なんてことのないように、できれば生前に申し立てておきましょう。
(2)他の相続人の思惑通りにならない可能性もある
後見人の任務は「認知症等になった被後見人の財産を守ること」です。
他の相続人が違う財産分けを企図していたとしても、後見人を納得させるのは難しいでしょう。
結局のところ、「法定相続分で分ける」が落としどころになるケースが多いです。
3、遺産分割協議をせずに「法定相続分」で分けたとしたら
「法定相続分」どおりに遺産分割を行えば、不動産の相続登記行う際に、「遺産分割協議書」を提出する必要はないメリットがあります。
反面
①認知症の相続人との共有状態では、共有者全員の合意を得ることができないため、不動産の売却、賃貸ができません。
②「小規模宅地等の特例」、「配偶者の税額の軽減」といった相続税節税のための特例は、「遺産分割協議書」がないと利用できません。
4、家族に認知症の方がいる場合の生前対策
(1)遺言書を作成しておく
遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても財産分けできます。
遺言書で遺言執行者を指定しておけば、相続手続きがスムースに進むので、尚の事よい。
(2)家族信託
例えば…
委託者:父親
受託者:長男
受益者:父親
第二受益者:認知症の母親
信託終了原因:父親&母親の死亡
帰属権利者:長男
の「家族信託契約」を締結しておく。そうすれば遺産分割協議を回避できます。
投稿者プロフィール
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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