プロベート
1、プロベート
日本では、相続が発生すると、相続人間で話し合いをして、遺産分割協議書に全相続人が押印をします。
一方、アメリカの相続では、相続人間の話し合いで勝手に遺産を分配することはできず、裁判所の監督の下で、遺産の確定、負債の弁済、相続人への分配がされます。これを「プロベート」といいます。
プロベートを行う国:アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、香港等(管理精算主義)。
日本のように裁判所が介入せずに相続人間で分割手続きを行う国:ドイツ・イタリア・フランス等(包括承継主義)。
2、「プロベート」のメリット
①相続人が借金を引き継ぐことはない
プロベートでは「人格代表者」が債権者へプロベートが始まったことを知らせたり、把握できていない債権者がいないか調査したりして、借金や税金を遺産財団から支払います。
一定の期間が経過すると、債権者は相続財産に対して権利主張ができなくなります。
②相続人や受遺者は、プロベート中に「人格代表者」が発行する不動産の権原証書に基づいて、円滑に権利を承継することも可能となります。
③裁判所の関与の下、「人格代表者」が遺産財団に対して信認義務 を負って管理清算手続を進めますので、適正な相続手続が期待できます。
3、「プロベート」の問題点
①時間がかかる:約1年~3年。その間利用、処分が制限される
②費用が高額:弁護士、会計士、不動産鑑定士等、専門家への報酬。遺産総額の数%ほど。
③被相続人の遺言書や財産の内容、相続人の情報などの個人情報が公開される。
4、「プロベート」を事前に回避する方法
(1)TODD又はPOD
自分が死亡した際にはこの者に所有権を譲渡する、ということを定めておくことで、ご本人が亡くなられたときに、受益者が、煩雑なプロベート手続きを経ずに不動産や口座を承継することができます
①不動産については死亡時譲渡証書(TODD)
②銀行口座、証券口座については死亡時支払(POD)
(2)生前信託(リビング・トラスト)
リビングトラストは、生前の間は、本人がトラストの設立者及び受託者となり、引き続き資産の所有者として運用、管理、処分を行うことができます。
そして、ご本人が亡くなった時に、予め定めた後任受託者が、プロベートを経ることなく、受益者に遺産を承継させることができます。
日本でいう「遺言代用信託」のようなものです。
リビングトラストは、
①TODDのない州でも使える
②複数の不動産と銀行口座をまとめて一括で管理できる
メリットがあります。
(3)共同所有
不動産を購入するときや銀行口座を開設する時点で、例えばご夫婦共同にすることでプロベートを回避する方法。
不動産では、2人で購入をして、その後1人が亡くなった場合に、生存している方が完全な所有権を承継できる所有形態があります。
この所有形態は、日本でいうと「共有の状態に、生存者取得権が付帯しているもの」と考えられます。
また、銀行口座については、2人の共同口座として開設。生存者取得権が付いた形となります。
たとえ1人が亡くなっても、もう1人はプロベートを経ずに、単独の所有者として引き続き口座を保有することができます。
ただし、不動産購入後または銀行口座開設後に共同にすると、後から入ってきた方への贈与税が課されるリスクがあるので、不動産購入時または銀行口座開設時にされることが望ましいです。
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