遺言執行者がいるのに、遺言書と異なる内容で遺産分割できる?
1、遺言書が出てきたものの…
故人が作成していた遺言書が出てきたものの、果たしてその通りに財産分けしてよいのか?、って時があります。
例えば、遺言書の記載どおりに遺産分割をすると、相続税の節税効果が高い「小規模宅地の特例」が使えなくなってしまう、とか。
故人が遺言書を作成する際、専門家に相談していれば容易に防げることでも、誰にも相談せず作成してしまったら、こういうことも得てしてあるでしょう。
2、命題
(1)遺言書があれば遺産分割協議は必要ない
(2)他方、共同相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる内容で遺産分割をすることも可能である
(2)については、別に条件があります。
①相続人は「被相続人が遺言で禁じた場合を除き」いつでもその協議によって遺産の分割をすることができる(民法第907条)。
遺言書で遺産分割が禁じられていないことが必要です。
②相続人のほかに遺言書によって財産を受け取るものとされている第三者(受遺者)がいる場合、相続人だけでなくその受遺者も遺言書と異なる内容の遺産分割協議によって相続が行われることに同意していることが必要となります。
なぜなら、相続人が一方的に遺言書によって受遺者に与えられた権利を奪うことは許されないからです。
3、遺言執行者がいる場合
では、遺言書で遺言執行者が指定されている場合でも、相続人全員+受遺者の同意があれば、遺言書と異なる内容の遺産分割協議によって相続することができるか?。
民法の規定により「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」とされています(第1012条1項)
かつ、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と定められてます(民法第1013条1項)
従って、遺言執行者がいる場合、相続人全員の同意によって遺言書の内容と異なる遺産分割を行うには遺言執行者の同意が必要です。
逆に書くと、遺言執行者の同意がないまま、相続人だけで金融機関の手続き等を進めようとすると、上の民法第1012条1項の規定と真っ向からぶつかることになります。
金融機関としては「遺言執行者の同意を得てから」旨、対応するしかないでしょうね。
投稿者プロフィール
-
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
皆で応援し、安心して暮らせる社会を作りたい。
そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。
当事務所への「お問い合わせ欄」は「こちら」
お気軽にご相談下さい。
最新の投稿
- 相続2024年12月22日[事例]予備的遺言と遺言執行者の選任
- 相続2024年12月22日遺言執行者が相続財産を開示しないときは?
- 登録、許認可、契約2024年12月22日医薬品のネット販売(特定販売)
- 登録、許認可、契約2024年12月21日医薬品店舗販売業