ネパール人が死亡した際の相続手続き

「法の適用に関する通則法」には、「相続は、被相続人の本国法による」と明記されており、相続に関しては亡くなった人の国籍を持つ国の法律が適用されます。

なので、日本で亡くなった在日人の相続手続きは、ネパールの法律に基づいて行われることになります。

ネパール法ですが「動産の相続は、被相続人の死亡時の常居所地法で、不動産の相続は当該不動産の存在する国の法律で規律される」と規定されています。

したがって、

①日本国内で死亡したネパール人の相続についてはネパール法が適用される

②日本国内に不動産や動産を所有していた場合、その不動産、動産の所在地の法律(日本法)に従う

ことになります。

相続手続きですが、ネパールには戸籍がありません。

本国から

①出生証明書

②結婚証明書

③家族関係証明書

④死亡証明書

などを取得。ネパール外務省にて認証後、在日ネパール大使館にて認証を受け「被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍」の代わりとします。

また、

(1)被相続人の外国人登録原票の写し

平成24年より前に日本に移住した方は、日本移住時~平成24年までの日本で生活していた期間については戸籍の代わりになる書類として「外国人登録原票」を使用することができます。

(2)上申書、宣誓供述書

これに対し、平成24年以降~死亡までの期間については、戸籍の代わりになる書類は存在しないことになります。

平成24年~亡くなるまでの相続関係を証明できない場合、相続人全員が、自分が亡くなった方の相続人に相違ないことを日本の公証役場で宣誓、署名押印します。これを「宣誓供述書」といいます。

さらに、相続人は全員であることを「上申書」として「宣誓供述書」とともに、法務局や銀行などでの相続手続きの際、提出します。

ネパールでは家族財産が家族構成員の共同財産として扱われるため、相続開始以前に共同財産分割持分の分割などが行われてます。

なので、相続時に被相続人の財産を一挙に分配するという仕組みにはなっていない点が特徴です。

◎相続人の順位

第1位:同居している夫または妻

第2位:息子、娘、同居している死亡した息子の寡婦

第3位:父、母、継母、同居する息子の子

第4位:別居している夫、妻、息子、娘、父、母、継母、婚出した娘

第5位:祖父母、同居する兄弟姉妹

第6位:同居している叔父、叔母、甥、姪

第7位:別居している息子方の子

第8位:同居している兄もしくは弟の妻

第9位:別居している兄弟姉妹

第10位:別居している祖父母、孫の妻

第11位:男系かつ7親等内の親族

㋐被相続人が、家族共同財産分割持分を分割した場合、被相続人と同居する親族が相続人となる。

㋑被相続人の面倒を生前に見た親族は、相続順位が遠い場合でも相続する

㋒同順位の相続人が相続放棄をした場合には、同順の相続人が放棄した財産を承継し、同順位の者がいない時には、次順位の者が相続する。

㋓被相続人が家族共同財産分割持分を分割した後に同居をしていた相続人が、被相続人の面倒をみなかった場合には、別居している相続人に相続が開始する。

㋔相続人以外の者が被相続人の面倒を見ている場合、この者が被相続人を相続することになる。

このように、基本的に、同居と扶養が相続の重要な要素となっています。

※参考:「法務省HP「ネパールにおける現行民事法の現状と今後の立法動向

※参考:「法務省HP「ネパール新民法の概要

上にも書いた通り、ネパールでは日本と異なり、家族財産が家族構成員の共同財産として扱われるので、残された相続人が制度を理解した上で、は非常に難易度が高いです。

その点、在日ネパール人が遺言書を残すことができれば、問題は解決に向かいます。

(1)遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか

遺言の方式の準拠法に関する法律第2条

遺言は、その方式が次に掲げる法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効とする。

一 行為地法
二 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時国籍を有した国の法
三 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時住所を有した地の法
四 遺言者が遺言の成立又は死亡の当時常居所を有した地の法
五 不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

したがって、「行為地法」により、日本の方式で「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」を作成することが可能です。

(2)遺言書の成立、効力について

法の適用に関する通則法第37条 

遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2017年。ネパールで新民法が成立しました。

草案では、遺言の章が施行されることで「共同財産の分割」 の章の条項の効力が失われることが予定されていたものの、遺言制度の施行により、かえって不公平となる反対意見が強く、遺言の章の施行が見送られた経緯があります。

なので、条項はないものの、ネパール民法が「遺言」を十分に意識したもの、と解釈できないこともないです(あくまでも私見)。

(3)不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるか

上にも書いた通り、日本の法律を適用できます。

以上より、相続人の資格を有する者、順位に従った自筆証書遺言を作成することは可能と考えることができます(あくまでも私見)。

ただ、公証役場で公正証書遺言を作成する際には、公証人に「ネパール民法における遺言制度」についての経緯から説明しなければならず、必ずしも100%遺言書を作成できる保障はない点に注意が必要です。

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