アメリカとの相続税条約

米国市民以外の者に対する米国連邦遺産税の基礎控除額は6万ドルとなります。

従って6万ドルを超える財産を有する場合、遺産税の支払義務を負うのが原則です

他方、日本と米国は「相続税条約」を締結しています。

日本人についてはアメリカ市民が死亡した場合と同様に取り扱われることになります。

その結果、日本国民については、アメリカ市民と同様、連邦遺産税について1361万ドルの税金が控除されることになっています。

米国市民については相続の対象となる全ての財産について1361万ドルの控除が認められます。

これに対し、米国に財産のある日本人に対しては、米国にある財産に対してのみ連邦遺産税が課せられることになります。

なので、日本人が所有する米国の財産に対する連邦遺産税から1361万ドル全部の控除を認めると、日本人に対する控除額がアメリカ市民よりも大きくなりすぎることになります。

そこで、1361万ドルにアメリカ国内にある財産の全世界にある財産の割合を乗じた額をアメリカ連邦遺産税からの控除額としています。

つまり、1361万ドル×(アメリカ国内にある相続財産の価額)÷(世界全体にある相続財産の価額)により計算されることになります。

事例:

米国にある財産が1億円

米国にある財産を含めた全世界の財産が10億円

の場合

控除される税金の額は、1361万ドル×1億円÷10億円=136.1万ドルになります。

アメリカにある財産は1億円なので、仮に遺産税が評価額に対する40%(4000万円)であったとしても税金の控除額である136.1万ドルより少ないことになりますので、米国で納める税金は0円となります。

アメリカの連邦遺産税について、1361万ドルの控除を受ける場合、被相続人の死亡時から9か月以内に連邦遺産税の申告を行わなければなりません。

その際、米国にある相続財産だけでなく、米国を含めた、世界全体の相続財産を申告しなければなりません。

連邦遺産税と同様、州の遺産税についても申告が必要となります。

但し、州の遺産税について州ごとに基礎控除額が定められていますので、その金額を超える相続財産がその州にある場合に限り課税されることになります。

日本に住所を有する日本人は、無制限納税義務者とされますので、日本に所在する財産の他、外国に所在する財産についても相続税の申告が必要になります。

相続税を支払うのは「相続人」です。

他方、米国においては、被相続人が米国市民でもなく、米国居住者でもない場合には、米国に所在する財産についてのみ米国の遺産税の対象となります。

相続人が支払うのではなく遺産から差し引かれる、相続税の納税者は「被相続人」の形式です。

従って、日本に居住する日本人がアメリカに財産を残して亡くなった場合で、日本に相続人がいる場合、アメリカ国内にある財産について日本とアメリカで二重課税が生じることになります。

二重課税の回避については、相続税法20条の2で規定されています。

「相続又は遺贈によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、第15条から前条までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもって、その納付すべき相続税額とする。」

つまり、米国で納付した遺産税については、日本で納付する相続税額から控除されることになります。

※参考:「国税庁HP「NO.4138 相続人が外国に居住しているとき

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