ペット信託
1、「負担付死因贈与」、「負担付遺贈」もありますが…
現行法の下でも「負担付死因贈与」や「負担付遺贈」でペットの飼育を託すことができます。
①「負担付死因贈与」:ペットを飼育してもらうことを条件に、贈与者の死亡後に財産を贈与すること。
②「負担付遺贈」:ペットを飼育してもらう義務を負担させた遺贈。
しかし、この二つの制度には難点があります。
①「負担付遺贈」は、財産を受け取る側がその遺贈を放棄することが可能であり(民法第986条1項)、遺贈放棄をされてしまった場合、遺贈者の死後に飼育者が不在となってしまう。
②「負担付死因贈与」では双方の合意が必要なので、上記の問題は生じません。
ただ、受贈者が「ペット飼育」を履行しているかどうかを第三者がチェックする仕組みがなく、受贈者が財産を受取った後、ペットの飼育が適切に行われるとは限りません。
③「負担付遺贈」では、ペットの適切な飼育をしない受遺者に対して、遺贈者の相続人や遺言執行者が期間を決めて適切な飼育をするように催告することができ、期間内に履行がない場合、遺言の取り消しを家庭裁判所に求めることもできますが(民法第1027条)、時間がかかり、早期の解決には不向きです。
④「負担付死因贈与」や「負担付遺贈」では、受取ったお金は受取った者の財産になるため、受取ったお金をペット飼育費以外にも使うことができてしまいます。
また、ペットの飼育終了後、残ったお金があったとしても、そのお金は受遺者、受贈者の財産となってしまいます。
2、ペット信託
「ペット信託」とは、財産を信頼できる第三者へ託し、ペットの飼い主の、もしもの事態に備えることのできる信託です。
①委託者:ペットの飼い主
②受託者:信託財産(金銭)を管理する者
③受益者:実際、ペットを飼育する者
(1)「ペットの飼い主である委託者」が、「信託財産(金銭)を管理する受託者」と「実際にペットを飼育する受益者」を選びます。委託者に判断能力がないと、契約自体が無効になるので注意しましょう。
↓
(2)契約の内容
①飼い主(委託者)の希望する飼育条件を盛り込む。
②信託の終了時(ペットの死亡等、信託終了原因)の残余財産の帰属権利者についても定めておく。
3、「ペット信託」のメリット
①世話にかかる費用として、飼育費としての信託財産があるので、確実にペットの飼育費を残して、ペットを第三者に託すことができる。
②ペットに関する信託財産を託された受託者は、信託財産の支出について、信託契約で決められた範囲でしか使うことができない。
つまり、信託財産はペットのためにしか使うことができない。
③ペット信託は、遺贈や死因贈与と異なり、ペットの飼い主(委託者)とペットを世話する人(受益者)が十分に事前に打合せをした上で、合意することができるので、飼い主の希望に近いペットの飼育条件を信託契約に盛り込むことができる。
また、信託監督人を置くことにより、ペットの飼育条件が守られているか、実際きちんと飼育されているか、信託財産が適切に使用されているか等をチェックすることもできる。
④ペット信託が終了したタイミングで残った財産について、どのように処分するのか、例えば、相続人に譲り渡すのか、その他親族などに譲るのか等を、事前に決めておくことができる。
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