フィリピン人が死亡した際の相続手続き

「法の適用に関する通則法」には、「相続は、被相続人の本国法による」と明記されており、相続に関しては亡くなった人の国籍を持つ国の法律が適用されます。

なので、日本で亡くなった在日フィリピン人の相続手続きは、フィリピンの法律に基づいて行われることになります。

フィリピンにおいては、相続に関する法律として「フィリピン民法」と「ムスリム身分法」の2つの法体系が存在します。

被相続人がイスラム教徒の場合はムスリム身分法、イスラム教徒でない場合はフィリピン民法の適用がされます。

フィリピンは人口の90%以上がキリスト教徒で占めてますので、この投稿ではフィリピン民法について解説します。

(1)嫡出子がいる場合

①嫡出子と配偶者

配偶者の相続分は、子供(嫡出子)の各相続分と同じ割合になります。

例えば、

㋐嫡出子が2名いる場合:配偶者の相続分は1/3。

㋑嫡出子が3名いる場合、配偶者の相続分は1/4。

②嫡出子と非嫡出子

非嫡出子の相続分は、嫡出子)の1/2となります。

したがって、嫡出子と非嫡出子が1名ずつの場合、嫡出子の相続分は2/3、非嫡出子の相続分は1/3。

③嫡出子と配偶者と非嫡出子

①②の通り、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2。配偶者の相続分は嫡出子の各相続分と同じ割合になります。

したがって、配偶者、嫡出子2名、非嫡出子2名の場合、配偶者1/4、嫡出子各1/4、非嫡出子各1/8となります。

(2)嫡出子がいない場合

①親と配偶者

配偶者の相続分は、常に1/2。

したがって、両親ともに生存している場合、配偶者の相続分1/2、両親の相続分各1/4。

②親、配偶者、非嫡出子

親の相続分1/2、配偶者の相続分1/4、非嫡出子の相続分は1/4。

遺言がある場合、プロベート手続(遺言検認手続)という、裁判所を通じた手続きを行う必要があります。

プロベート手続(遺言検認手続)の申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する地域裁判所です。

原則として、遺言で指定された方が遺言執行者に選任されます。

裁判所により選任された遺言執行者は、清算手続きを経た後、残りの財産を遺言に従って相続人に分配します。

被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、遺産分割協議手続又は裁判所による遺産管理手続によって相続手続を行うことになります。

後者の場合、法定相続人は、フィリピンの裁判所に対し、財産管理人の選任の申立てを行います。

裁判所が財産管理人の選任決定を出すと、その財産管理人は清算手続きを経た後、残りの財産を相続人に分配することになります。

フィリピンでは、戸籍が存在しないため、故人の死亡、出生、結婚などの事実は、それぞれフィリピン統計庁(PSA)から「死亡証明書」「出生証明書」「婚姻証明書」を取り寄せて証明することになります。

しかし、これ等の資料だけでは、相続人全員を明確に特定できません。

そこで、相続人全員の「他に相続人はいない」旨の上申書を作成することになります。

㋐日本在住の相続人は上申書に実印を押印の上、印鑑証明書を取得。

㋑フィリピン在住の相続人は上申書に署名の上、署名を認証する公証人の宣誓供述書を取得。

※参考:「駐日フィリピン大使館」

※参考:「在フィリピン日本大使館HP「署名証明」」

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