遺留分を渡さないで済む方法は?

「遺留分」は、亡くなった方の兄弟姉妹以外の近しい関係にある法定相続人に最低限保障される遺産取得分です。

この権利は遺言によっても奪うことはできません。

「遺留分を算定するための財産の価額」は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする(民法第1043条)

具体的には

①故人が相続開始時に有していた財産(不動産、預金、株式、動産等)

②相続人ではない人への1年以内の生前贈与(民法第1044条1項)

③相続人への10年以内の特別受益(民法第1044条3項)

④負債(借金等)

①+②+③ー④

生前対策として、以下のものが考えられます。

①養子縁組で相続人の数を増やし、遺留分を減らす

ただし、あからさまに「遺留分を減らす目的」で実行すると養子縁組が無効になる可能性もあります。

②生命保険契約を締結。将来発生する「遺留分侵害額請求権」の支払いに充てる

③他の相続人に早めに生前贈与しておく

上でも書いた通り、遺留分の対象となる財産は「相続人への10年以内の特別受益(民法第1044条3項)」なので、亡くなった時点で10年経過していれば、その財産は遺留分の対象になりません。

④他の相続人に生前贈与後、相続放棄してもらう

生前贈与した法定相続人が相続放棄すると、初めから相続人ではなかったという扱いになるので、この生前贈与は「相続人以外への生前贈与」に該当することになります。

なので、亡くなった時点で1年経過していれば、その財産は遺留分の対象になりません。

ただし、③にもいえますが、明らかに遺留分権利者を害する目的で実行すると、裁判で遺留分の対象にされる可能性があります。

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、

①相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

②相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする

(民法第1048条)

つまり、例えば、家族と長年疎遠な方が、死亡を10年間知らないままで、遺留分侵害額請求権を行使しなければ、遺留分を支払わずに乗り切ることができます。

ただし、その「10年間」は「何らかの形で死亡を知って、遺留分侵害額請求権を行使されるかも」の「恐れ」と背中合わせになりますが…。

例えば、長年不和の妻が行方不明。離婚手続きできないまま、夫死亡。

相続開始後、妻が戻ってきて相続権を主張しました。

判例が見当たりませんが、年数など、状況によっては、裁判で妻による「遺留分侵害額請求権」が無効とされる可能性は0%ではないのでは。

本当は日本で韓国の「ク・ハラ法」(被相続人に扶養義務を果たさなかったり、虐待など犯罪を犯した場合のように相続を受ける資格がない法定相続人の相続権を制限する内容の法案。2026年1月施行予定)のような法案が成立。同時に「遺留分制度」も廃止すれば、長年の懸案である「どうしても相続させたくない相続人に財産を渡さない」がすぐ解決するんですが…。

こちらも可能性が0%でないこと、期待したいですね。

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