[事例]遺言書を残したとしても解決は難しい

㋐父親死去。相続人は妻、長男、次男。遺言書は残していない

(遺言書を残していないと「争族」必至)

㋑次男は独立。結婚して親元を離れてますが、長男は就職氷河期の影響で職を持たず(典型的な「8050問題」)

㋒長男は父親の介護をしていた(「寄与分」主張できるか?)

㋓相続財産:自宅の他は僅かな現金のみ

(共有名義を避けるなら「代償分割」必至。施設入所費用捻出のため、売却検討)

㋔父親死亡後、母親認知症に

㋕長男、次男に無断で施設に入れてしまう

㋖次男、母親に後見人を付ける

㋗後見人、長男、次男で遺産分割協議。長男、実家の相続と寄与分を主張するものの認められず。実家を売却。代償金を支払って家を出ていくことに。

(1)遺言書を残していない

①長男が定職についていない

②相続財産が実家と僅かな現金

③長男が父親を介護したことについての「寄与分」を主張したとしても、遺産分割協議で認められる可能性は低い

等、考慮すると、「争族」にならない方がおかしい。

「8050問題」を抱えていた時点で遺言書を残すには必至だった。

残さなかったのは迂闊としか言い様がない。

(2)「代償分割」必至で、長男が実家を相続したければ、次男に代償金を支払うだけの金銭が必要でしたが、無職の上に実家を相続するのを次男に邪魔された状態では万事休す。

(3)慌てて(?)次男が後見人を選任してしまった。

後見人は本人の財産を守る見地から、法定相続分(妻は1/2)以上の相続分出ないと承認しない。

遺産分割協議で後見人が登場した時点で、長男が実家を相続できる可能性は、代償金を支払えない限りゼロに。

父親が「長男に実家を相続させる」旨の遺言書を残し、次男に遺留分(相続分(1/4)×1/2=1/8)に相当する金額を支払うことができれば、実家を売却する必要はなかったかもしれません。

相続税ですが、基礎控除分(3000万円+600万円×法定相続人の数(今回の場合3人)=4800万円)に長男が自宅に住んでいることから「小規模宅地等の特例」を適用できるので、土地の評価額が8割減。余程の都心でなければ、相続税の支払いも免れる可能性が高いです。

しかし、その条件で次男が納得するとは思えませんし、父親がそのような遺言書を残したことを次男が知った時点で家族断絶は確実でしょう。

すでに次男は独立しているので、実家に居住することはない。

後見人の存在を抜きにしても、次男がかなり妥協して、遺産分割協議がまとまらない限り、実家を売却するしか方法がないか…。

起死回生の策として「父親が長男を受取人とした生命保険契約を締結。長男が実家を相続して、次男への代償金に保険金を充てる」も考えられますが、「8050問題」を乗り切るのに精一杯の父親にそこまでの余力はないでしょうね。

※参考:「Yahoo NEWS「こんなはずでは…85歳父の介護に励むも〈53歳長男〉が後悔してもしきれない痛恨のミス。父の死後、2歳年下弟からの〈最後通牒〉に撃沈したワケ

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代償分割

遺産を分割する方法には、以下の3つの方法があります。 (1)現物分割: 土地や建物、株式、現金等の財産を、現物のまま相続人の間で分割する方法

寄与分

「寄与分」は、相続財産の維持、増加に寄与した、つまり、「特別の寄与」があった、相続人につき、その貢献度に応じて認められます

代償分割の支払いには生命保険金

「代償分割」とは、相続人の一人が財産を取得。他の相続人には代償金を支払うことによって清算する遺産分割の方法です。

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山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」行政書士
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