[事例]母認知症。介護離職の危機の長女。しかし、長男は無関心。長女は報われる?

◎事例

㋐父親既に死亡。母親重度の認知症。

㋑独身の妹(長女)が自宅で献身的に介護。しかし、限界寸前。介護離職寸前。

㋒兄(長男)は結婚。自宅を出ている。介護については僅かな金銭的援助だけで基本無関心。

㋓5年後母親死亡。相続人は長男、長女

長女の献身的な介護に対し「寄与分」を認めてあげたい

「寄与分」は、相続財産の維持、増加に寄与した、つまり、「特別の寄与」があった「相続人」につき、その貢献度に応じて認められるものです

(民法第904条の2)

(1)「寄与分」が認められる要件

①その寄与行為が被相続人(亡くなった方)にとって必要不可欠であったこと

②扶養義務の範囲を超えた「特別な貢献」であること

③被相続人から対価を得ていないこと

④寄与行為が一定の期間あること

⑤寄与行為と被相続人の財産の維持・増加に因果関係が認められること

(2)「寄与分」が認められるための証拠資料

㋐要介護認定通知書

㋑介護サービス利用表

㋒介護サービスのケアプラン

など

(3)「寄与分」が認められる方法

遺産分割協議。認められなければ、家庭裁判所による遺産分割調停、審判

(4)寄与料算定

介護報酬相当額価額 × 療養看護日数 × 裁量割合(0.5~0.8)

つまり、どんなに献身的に介護しても、介護職に従事していた方が行っていた場合の報酬以下の金額と評価されてしまいます。

本事例の場合、遺産分割協議で、長男が納得した上で、すんなり長女が要求する額(寄与分)を認めれば万事解決ですが、そうじゃないと、たとえ遺産分割審判までもつれ込んだとしても、十分な金額ではなく、他にも弁護士費用がかかるとしたら‥。

しかも、万事解決にならない限り、どんな分け方であれ、長男との仲が上手くいくわけがなく、兄妹仲崩壊。

結局母親が認知症発症後では兄妹仲崩壊は避けられない。

(1)遺言書を残す

介護してくれた「気持ち」を長女に対する分け前で示す。

たとえ長女の分け前のほうが多くても、遺留分に反しない限り、長男はどうすることもできない。

(2)長女に対し、生前贈与を行う

「年間110万円まで」なら贈与税はかからない。

ただし、毎年規則正しく贈与すると「定期贈与」とみなされ、贈与税がかかってしまう可能性があるため、

①毎回贈与契約書を作成する

②時期、金額を変える

などの、贈与税がかからない対策を立てておく

(3)負担付死因贈与契約

例えば「私が死ぬまで介護を続けてくれたら財産を〇〇円あげます」とかの条件付き贈与契約です。

勿論認知症の病状の進行次第では長女の介護が難しくなることもあるので、その際は「ケアマネージャーと相談の上、施設に入所させる」の1項を入れておく。

「寄与分」には上に書いたように、中々認められない上に、やっと認められたとしても十分な金額ではない「弱点」があります。

長女の介護の苦労に報いるためには生前に対策を立てておくことは必須といえます。

なお、長女が介護に関し、究極に困ったら、家庭裁判所に対し「成年後見制度の利用」を申し立てる方法もあります。

就任した後見人は、たとえ長男が反対でも、必要性が高いと判断するなら、母親の施設への入所契約を締結することができます。

原則家庭裁判所の許可も不要です。

財産の管理も後見人がしてくれるので、長女の介護離職の不安も軽減します。

ただ、どうしても施設の月額費用が足りなくなった場合、後見人が家庭裁判所の許可を得て、実家の売却を‥、と検討すると、実家に居住している長女の問題にもなりますけどね。

※参考:「Yahoo NEWS「認知症で変わりゆく82歳母を献身的に介護する年収420万円・49歳娘、「もう無理、施設に預けよう」断腸の思いで決断も…実兄が放った〈まさかの一言〉に怒りの涙

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「寄与分」は、相続財産の維持、増加に寄与した、つまり、「特別の寄与」があった「相続人」につき、その貢献度に応じて認められるものです (民法第904条の2)

成年後見の申し立て

◎申し立てをすることができる方 本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長、検察官等

山梨県、甲府市で見守り契約、財産管理契約、任意後見契約、遺言書の作成、公正証書遺言の原案作成、尊厳死宣言公正証書の原案作成、死後事務委任契約、終活に関する様々な問題にお困りでしたら、ご相談承けたわまります。

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山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
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