マンションの敷地権
1、敷地権
「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」(区分所有法第1条)
区分建物で独立した各部分を専有部分、その専有部分を所有する者を区分所有者と言い、その権利を区分所有権と言います。
これに対し、廊下やエレベーター、階段など、区分所有者が共同で利用する部分を共用部分といい、各区分所有者が共有しています。
マンションにはこの区分所有権とマンションの敷地を利用する権利である敷地利用権がありますが、この区分所有権と敷地利用権は原則、分離して処分できません(区分所有法第22条)。
このような分離不能な敷地利用権として登記された権利を敷地権といいます。
2、分離処分を禁止している理由
通常、土地と建物は別の不動産として別々の登記を行います。
しかし、マンションのような区分建物の場合、敷地利用権は全戸の所有者での共有となります。
これを通常の不動産取引のように土地と建物を別々に登記するものとすると、各戸の登記簿はそれぞれ別々に存在するのに、敷地は共有なので土地の登記簿は一つしか存在しないことになります。
仮にマンションの各戸の売買が行われると、建物については独立して存在し登記簿に記載されているため問題ではありませんが、土地は共有のため、同一の登記簿に所有権移転登記することとなります。
そのため、売買が行われる度に記載内容が膨大かつ複雑になり、非常に分かりにくい登記簿となってしまいます。
そこで、昭和58年の区分所有法改正により、専有部分と敷地利用権の一体化の制度が始まり、原則、分離処分禁止となりました。
その結果、マンションの売買時においては、所有権移転登記場度は区分建物の登記のみとし、土地登記簿には記載しないこととなり、処理が簡略化、登記の確認も容易なものとなりました。
3、敷地権化されていないマンションがある
上のように、昭和58年の区分所有法改正によって、分離処分禁止の原則という考え方ができましたが、それ以前に竣工したマンションは敷地権化されていないままで現在も存続しています。
敷地権化されていないマンションの場合、専有部分と敷地の登記簿が別々に存在しますので不動産の名義変更時には注意が必要です。
別のものなので、専有部分と敷地の登記申請は別申請になります。
マンションが敷地権化されているのか、されていないのか、については、マンションの登記簿謄本を取得すれば分かります。
4、相続についても注意
注意が必要なのは名義変更の際だけではありません。
相続の際も、です。
相続が発生した際には、建物と土地が一体化されているかどうかを確認、必要に応じて土地と建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を個別に取得しなければなりません。
被相続人(亡くなった方)が所有していた不動産を正確に把握するためには、「固定資産税等評価証明書」の取得することが必要です。
「固定資産税等評価証明書」は、市区町村役場で被相続人の名前を指定して取得できる書類であり、被相続人名義の不動産がすべて記載されています。
この証明書により、それぞれの地番や家屋番号を特定。登記事項証明書を取得することで、被相続人の正確な不動産情報を確認することができます。
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