法定相続分による相続登記
1、法定相続分による相続登記
不動産の名義を書き換える相続登記には、大きく分けて
(1)遺言による相続登記
(2)遺産分割による相続登記
(3)法定相続分による相続登記
があります。
2、遺言による相続登記
遺言書がある場合には、その遺言書に記載されたとおりに相続登記を申請します。
なお、自筆証書遺言の場合、相続登記を申請する前に家庭裁判所の検認という手続きが必要になります。
これに対し、「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合は、家庭裁判所の検認は不要です。
3、遺産分割による相続登記
遺産分割による相続登記は、法定相続人全員による遺産分割協議が成立し、その内容に従って行います。
遺産分割による相続登記を申請する際、遺産分割協議書を添付します。
この協議書は法定相続人全員が署名し実印により押印する必要があるので、印鑑証明書も添付しなければなりません。
4、法定相続分による相続登記
遺言書が存在せず遺産分割協議も行われなかった、もしくは、協議がまとまらなかった場合、法定相続人全員の名義で、民法が定めた法定相続分どおりに相続登記を申請することもできます。
「法定相続分による相続登記」を申請する際は、遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書を添付する必要はありません。
また、この相続登記はいわゆる「保存行為」と呼ばれ、他の相続人の同意なくても、相続人のうちの1人が申請することが可能です。
5、法定相続分による相続登記の問題点
(1)登記の内容を変更する際、手間と費用がかかる
事例:
相続人A、B、Cが持分3分の1ずつ法定相続分による相続登記を行ったあと、遺産分割協議によってAが単独で取得することが決まった
この場合、B、Cの持分全部をAに移転する遺産分割による相続登記を行わなければなりません。
B、CからAへの贈与とみなされ、贈与税が課されてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
(2)不動産が共有状態になる法定相続人が複数名いる場合には、法定相続分による相続登記を行うと不動産が共有状態となります。
この共有の状態を放置すると、売却に手間がかかったり、相続発生により、さらに分割化される恐れがあります。
(3)申請人以外には登記識別情報通知が発行されない
法定相続人のうち誰か一人が代表して法定相続分による相続登記を申請すると、申請人となった相続人にのみ登記識別情報通知(いわゆる権利証)が発行されます。
つまり、申請人にならなかった他の相続人には登記識別情報通知が発行されず、所有者でありながら権利証がない状態になります。
相続した不動産を売却したり、融資を受けるために担保権を設定したりする場合、登記識別情報通知が必要となりますが、申請人にならなかった相続人には「本人確認情報」(※)の作成料等、余分な手間や費用がかかることになります。
※司法書士等、専門資格者が代理申請する場合、申請者が間違いなく本人であることを証する「 本人確認証明情報 」を提供することによって、事前通知を省略することができるという制度
司法書士が本人に面談、運転免許証や健康保険証等の本人確認書類を提示を受けて行う
6、相続登記の義務化
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務化されました。
㋐不動産を相続した相続人は、「不動産を相続したことを知ったときから3年以内」に相続登記を行う必要があります。
㋑正当な理由なく期限内に相続登記をしなかったら、10万円以下の過料が科されます。
また、平成30年度から、全国の法務局において、長期間(30年以上)にわたって相続登記が行われていない土地について、その土地の所有者の法定相続人を調査、この調査で判明した法定相続人に対して、相続登記の促進を目的として法務局から通知書を送付する制度もスタートしています。
7、相続人申告登記
相続登記の申請義務化に伴い、相続人が申請義務を簡易に履行できるよう、令和6年4月1日から「相続人申告登記」が開始となりました。
相続人申告登記とは、対象となる不動産を特定した上で、法務局に対し
㋐所有権の登記名義人について相続が開始した旨
㋑自らがその相続人である旨
を「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に申し出ることで相続登記の申請義務を履行したものとみなされる制度です。
この制度を利用すれば、「法定相続分による相続登記」を利用しなくても、相続人それぞれが単独で簡単に登記義務を履行することができます。
※参考:「法務省HP「相続人申告登記について」
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
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