マンションで「民泊禁止」→「民泊可」になってしまう可能性も

国はマンション管理規約のひな型である「マンション標準管理規約」を設定。民泊を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示しています。

(1)住宅宿泊事業(民泊)を可能とする場合

第12条  区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

2  区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

(2)住宅宿泊事業(民泊)を禁止する場合

第12条  区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

2  区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

※参考:「国土交通省HP「標準管理規約

平成29年8月改正前の標準管理規約のままで、民泊を禁止していないとします。

規約を改正して民泊を禁止するには総会での特別決議。つまり

①組合員総数の3/4以上の出席

②議決権総数の3/4以上の賛成

が必要です。

標準管理規約コメントに以下の規定があります。

㋐住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、

㋑専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。

㋒この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。

㋓また、この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を新築当初に設定することが想定される

(第46条関係③)

つまり、必ずしも「一戸一票」ではなく、1億円の価値のある住戸に「10票」を与えることも可能です。

また、標準管理規約には「新築当初」とありますが、新築当初だけでなく、途中から、総会の特別決議により、規約を改正。議決権の価値を変えるのも可能です。

最近、外国人による投資目的でのマンション購入が増えています。

新築当初から議決権の価値を「1億円の価値のある住戸に「10票」を与える」としたマンションに、途中から見晴らしのよい、財産的価値のある上層階の高額な部屋を外国人投資家がまとめて購入。一気に議決権の3/4以上を持つことも有り得ます。

新築初期の段階で、当時区分所有していた住民が総会の特別決議により規約を改正。「民泊禁止」を決めたとしても、容易に「民泊可」にすることも可能です。

それだけじゃありません。

新築当初は「一戸一票」だったとしても、途中で総会の特別決議により規約改正。

例えば「5平米の部屋には1票、50平米の部屋には5票、100平米の部屋には10票」とすることも可能です。

特に投資目的のマンションですと、総会に関心のない住民が多いので、「議長一任」の委任状を駆使するなど、何とか出席数さえ確保してしまえば規約を改正することも可能となります。

[事案]

議決権の算定方法を「専有面積比」から「一組合員一票」に変更する旨の規約改正を行うため、総会の招集通知を発送。

しかし、その招集通知には「規約・規則の改正の件」と記載されているのみでした。

そこで、区分所有者の1人が、「規約を改正する場合、集会の招集通知に議案の要領を記載することを要する」区分所有法第35条5項違反を主張。総会決議の無効を訴えました。 

[判決]

「議案の要領の通知が必要とされている趣旨は、

①区分所有者の権利に重要な影響を及ぼす事項を決議する場合には、区分所有者が予め十分な検討をした上で総会に臨むことができるようにするほか

②総会に出席しない組合員も書面によって議決権を行使することができるようにし、もって議事の充実を図ろうとしたことにある」

かかる法の趣旨に照らせば、本件の議案の要領は、議案の内容を事前に把握し賛否を検討することが可能な程度の具体性のある記載があるとは到底いうことができないとして、重大な瑕疵があり無効としました。

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例えば、改正前の標準管理規約のままで、民泊を禁止していないとします。

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