運送遅延が発生。運送会社の責任は?
1、標準貨物自動車運送約款
国土交通省HPにて、運送業に関する約款のひな型が公開されています。
多くの運送会社ではこのひな型に従い「貨物自動車運送約款」を用意しています。
※参考:「国土交通省HP「標準貨物自動車運送約款」
※参考:「佐川急便HP「標準貨物自動車運送約款」
2、運送が遅延したら
一般的に、運送業者は、遅延したことによって生じる損害を賠償する責任があります。
損害額は、運賃と商品代などの総計となります。
◎具体例
①配達指定日のある商品を遅延させた
②遅延が原因で果物などを腐らせた場合
運賃と商品代のほか、腐敗の程度によっては、腐敗によって被った損害を賠償する責任があります(拡大損害)。
ただし、台風、大雪など自然災害を理由で遅延した場合は損害賠償の責任はありません。
3、今回の佐川急便の例は?
令和7年12月5日。佐川急便は急激な荷物量の増加により、全国的に配達の遅れが発生していると発表しました。
主たる原因は「ブラックフライデーによる荷物の増加」と言われてますが、自然災害ではありませんし、交通事情でもありません。
自社の配達で処理できないほどの注文を受けた、佐川急便側の事情です。
一見運送遅延による損害賠償を請求できるように見えますが、佐川急便の「運送約款」には「運送遅延により損害賠償の責任を負う」旨の規定がありません。
他方、「運送保険約款」では「保険金が支払われない主な損害」として「運送の遅延による損害」を挙げています。
なので、一般的に、今回の佐川急便の運送遅延により損害賠償を請求するのは難しいでしょう。
損害賠償を請求できるとしたら「配達指定日から遅れて入荷したことにより、看過できないほどの著しい損害が発生した」(拡大損害)など、限られたケースになると考えられます。
※参考:「佐川急便HP「運送保険」
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