引きこもりの子供に相続させるには
1、8050問題
「8050問題」とは、就職氷河期や長引く不況、職場でのパワハラ等の人間関係などが原因で20代や30代の若者がひきこもりに。それが長期化し、80代の親が50代の子ども経済的に支えなくてはならない家庭が増えている社会問題のことをいいます。
親が、ひきこもりの子供の可愛さの余り、死後の生活のことを憂えて、他の兄弟姉妹よりも有利な条件で遺産を遺そうとすることがありますが、そのことが原因で兄弟姉妹同士のトラブルに発展することがあります。
他の兄弟姉妹には、最低限もらえる「遺留分」がありますが、気分的に面白いわけありません。
また、ひきこもりの子供は長い間社会や人との繋がりが希薄な故に、相続手続きにおいて必要なことができなかったり、せっかく相続してもお金の使い方、管理ができなかったりと、遺産を散財させ、生活が成り立たなくなる恐れがあります。
2、ひきこもりの子供に相続させない方法
(1)相続人から廃除する
遺留分を有する推定相続人が、
①被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、
②推定相続人にその他の著しい非行があったとき
は、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる
(民法第892条)。
被相続人(親)が家庭裁判所へ申し立てることにより、引きこもりの子どもを廃除できます。
(2)相続放棄させる
遺産分割協議などの際、引きこもりの本人に相続の意思がないようなら、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所への申し立てをすることにより、相続放棄を勧めるのも一つの方法です。
3、兄弟姉妹同士のトラブルを防ぐには
(1)遺言書を作成する
長年ひきこもりで、他の兄弟姉妹と意思疎通をしていない場合、遺産分割協議などの話し合いすら成立しない可能性があります。
遺言書を作成しておけば、遺産分割協議は不要です。
遺言書の中でも「公正証書遺言」は、遺言書の中でも、「公正証書」で作成される遺言書です。
公正証書遺言は、遺言者が相続などについての自分の意思を「公証人」に口授。
証人2名の立ち合いの下、法的な効力を備えた公的な文書(公正証書)として作成してもらったものです。
証明性、有効性が高く、かつ法的な執行力をも備えてます。
また、「公正証書遺言」で「遺言執行者指定」だと、金融機関の手続きで必要なものは
①亡くなった方の戸籍謄本
②遺言執行者の印鑑登録証明書
③銀行所定「相続に関する依頼書」
④遺言書
⑤亡くなった方の通帳、キャッシュカード等
で足ります。
(2)生命保険信託
「生命保険信託」とは、信託銀行等が生命保険の保険金受取人となり、万が一の時に、死亡保険金を受け取り、保険契約者が生前に定めたご親族(ひきこもりの子供)等に、予め決められた方法で、受け取った保険金により金銭をお支払いするものをいいます。
㋐通常の生命保険ですと、相続発生の際、受取人であるひきこもりの子供自身が手続きしなければなりませんが、首尾よく手続きできない可能性もあります。
その点、生命保険信託ですと、受託者である信託銀行等が生命保険会社に死亡保険金を請求してくれるので安心です。
㋑ひきこもりの子供自身が一括で多額の死亡保険金を受け取ることになると、詐欺などの被害に遭う可能性があります。
その点、生命保険信託ですと、例えば契約時に「毎月生活費として10万円振り込む」としておくことができるなど、柔軟な対応が可能です。
㋒果たして親亡き後、ひきこもりの子供自身が振り込まれたお金を管理できるか?、ですが、生命保険信託ですと、予め「毎月、生活費として10万円を子供の世話をしてくれる人(指図権者:親族でなくてもよい)の口座に振り込む」と決めておくことができます。
(3)家族信託
財産管理を他の家族(兄弟姉妹など)に託し、引きこもりの本人に定期的に渡してもらう事が可能です。
㋐委託者:父親
㋑受託者:母親
㋒第二受託者:健常な兄弟姉妹
㋓受益者:父親、ひきこもりの子供(扶養義務の範囲内の時期)
㋔第二受益者:ひきこもりの子供㋕信託財産:親がひきこもりの子供のためにせっせと貯めた預貯金等
4、まとめ
上にも書いた通り、「親亡きあと」相続において、引きこもり本人と兄弟姉妹の間でトラブルに発展するリスクがあります。
取り返しのつかない結果にならないよう、元気な内に専門家に相談を。
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投稿者プロフィール

- 行政書士
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◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
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そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。
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