親の年金使い込みが相続で発覚。返還請求できる?
1、刑法上の犯罪
①受給者本人が通帳やキャッシュカードなどを自分で保管して管理していた場合は窃盗罪(刑法第235条:10年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立します。
②これに対し、受給者本人の依頼により通帳などを管理していた場合は横領罪(刑法第252条:5年以下の懲役)が成立します。
ただし、窃盗罪や横領罪など他人の財産を侵害する罪は、行為者と本人との間に一定の親族関係がある場合(配偶者、直系血族または同居の親族)には刑が免除されます(親族相盗例)。
また、使い込みをしたのが成年後見制度により財産管理をする親族の場合、財産管理義務に反することから、業務上横領罪(刑法第253条-10年以下の懲役)に該当します。
そして、判例は親族相盗例の適用を否定してます。
「親族相盗例は「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有する」ことから親族相盗例を適用する余地はない」
2、相続時に返還請求する方法
(1)遺産分割協議の中で「返還請求するよう」促し、協議書に反映させる遺言書があっても、相続人全員の同意の遺産分割協議書があればこちらが優先します。返還を認めてくれれば円満に解決です。
(2)特別受益として調停、審判
遺産分割協議でまとまらなければ、年金を使い込んだ分を「特別受益」として家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることが考えられます。
「特別受益」とは、亡くなった方からの遺贈または贈与によって、相続人が得た特別の利益をいいます(民法903条1項)。
特別受益が存在する場合、各法定相続人の相続分を計算するに当たって「持ち戻し計算」が行われます。
~具体的事例~
相続人:配偶者A、子B、子C
相続財産:4000万円
Cに800万円の特別受益あり
特別受益がなかったと仮定すると、A、B、Cの相続分は以下のとおりです。
A:2000万円
B:1000万円
C:1000万円
持ち戻し計算では、相続財産の4000万円に、特別受益の800万円を加算した「4800万円」を、A、B、Cの法定相続分に応じて分配します。
A:2400万円
B:1200万円
C:1200万円(特別受益の800万円を含む)
Cはすでに特別受益の800万円を得ているので、実際に相続できるのは、
1200万円ー800万円=400万円のみです。
したがって、特別受益の「持ち戻し計算」により、A、B、Cの相続分は以下の通りになります。
A:2400万円
B:1200万円
C:400万円
(3)民事訴訟、少額訴訟
訴訟により、不当利得返還請求権(民法第703条)か不法行為による損害賠償請求権(民法第709条)のいずれかを行使することが可能です。
60万円以下の金銭の支払を求める場合なら、簡易裁判所に「少額訴訟」を提起する方法もあります。
参考:「裁判所HP」
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