アパート経営。認知症対策として「家族信託」

認知症に発症。判断能力がなくなると、契約行為ができなくなります。

①銀行預貯金の引き出し、解約

生活費を口座から引き出すことができなくなります。

②実家を売却、介護施設への入居契約

介護施設に入居する費用を捻出するため、実家を売却しようとしてもできません

③遺言書作成、生前贈与などの相続対策遺言書がないと相続人全員による遺産分割協議となりますが、普段から揉めやすいとまとまるものもまとまりません。

アパート経営においては、以下のことができなくなります。

①アパートの入居者や賃料収支を正しく把握できない

②空室ができても賃貸募集が出来なくなる

③修繕行為をしたくても契約できなくなる

④アパートの承継先を決められなくなる

認知症を発症した後の対策は「法定後見制度」しかありません。

家庭裁判所に成年後見人の選任の申し立てを行うことで、本人を代理することができます。

しかし、成年後見制度は

①家族が親族の就任を希望しても、必ずしも希望が叶うとは限らない

②専門家が就任した場合、毎月ある程度の費用(報酬)がかかる

③一度利用すると死亡するまで止めることができない

④認知症の本人の利益を守るべき立場から法定相続分を主張してくる点で親族の希望が通らない

など、使い勝手が悪い所がいくつかあります。

「成年後見制度」の利用は「義務」ではありません。

利用したければいつでも家庭裁判所に利用の申立てはできるので、できれば他に選択がない場合の「最後の手段」としてとっておきたいものです。

使わないで済むに越したことはありません。

「家族信託」は、所有権を「財産権(財産から利益を受ける権利)」と「財産を管理運用処分できる権利」とに分けて、後者だけを子供等に渡すことができる契約です。

これにより、所有者である親が認知症になったり、介護が必要になって自分で財産を管理できなくなったとしても、子供等が親のために、信託された財産の管理、運用、処分をすることができるようになります。

「家族信託」の登場人物ですが「委託者」「受託者」「受益者」です

・委託者:財産の元々の所有者。受託者に財産を信託する人

・受託者:委託者から財産の管理運用処分を任される人

・受益者:財産から利益を受ける人

「家族信託」の仕組みは、委託者が財産の管理を受託者に任せ、その財産を受託者が管理、その財産から発生した利益を受益者が得る、です。

アパートを経営している父親の認知症対策として「家族信託」を利用する場合、

㋐委託者&受益者:父親

㋑受託者:子供

㋒信託財産:賃貸アパート。経営のための諸経費

(1)委託者が認知症になったとしても、受託者が単独で管理・運用・処分行為が出来る

アパート経営で家族信託を利用すると、賃貸アパートの登記名義上の所有権は父親→子供へと移転します。

また、子供は受託者として、これまで父親が行ってきたアパート経営の事務手続きを引き受けることになります。

    ①委託者&受益者が父親なので、信託契約前と同様に、父親が賃料を受け取ることができます。

    ②登記簿上の名義は変更したとしても、実質的な権利が移動していないため、贈与税や不動産取得税が発生しません。

    ③登記簿上の名義は子供に変更されているため、㋐空室ができた際の賃貸募集㋑修繕工事の契約などを行うことができます。

    (2)遺言書より柔軟な対応ができる

    遺言書ですと次の後継者は決めることは出来ても、次の次の後継者は決めることが出来ません。

    その点「家族信託」は「第二受益者」を定めることによって、委託者死亡後の財産の継承を決めていくことができます。

    (3)委託者や受託者が破産しても差押えの対象とならない

    信託契約内で信託財産として指定された不動産や金銭は、委託者・受託者それぞれの固有財産とは区別されるので、アパートを信託財産にした場合、委託者、受託者が破産したとしても差押えの対象外です(倒産隔離機能)。

    アパートを信託財産にした場合、受託者名義の信託口口座を開設することになります。

    アパートの賃借人に対し、賃料振込口座が受託者の信託口口座に変更する旨の「振込先変更通知書」を送付しましょう。

    また、火災保険会社に対し、家族信託をした旨連絡しておかないと、保険事故が発生した際、「告知義務違反」を理由に、保険金が支払われない可能性があります。

    忘れず連絡しておきましょう。

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    家族信託

    「家族信託」は、所有権を「財産権(財産から利益を受ける権利)」と「財産を管理運用処分できる権利」とに分けて、後者だけを子供等に渡すことができる契約です。

    認知症になると出来なくなること

    認知症に発症。判断能力がなくなると、契約行為ができなくなります。

    認知症を発症し、本人の判断能力が低下していると金融機関が把握すると、 資産が凍結されます。

    預金を引き出せなくなったり、自宅を売却できなくなったりします。

    そこで、「認知症による資産凍結」を防ぐ目的で、親が自分の財産の管理・処分などを、信頼できる家族(子など)に託す仕組みが「家族信託」です。

    山梨県、甲府市で高齢の親の生前の財産管理にお悩みの方。是非専門家にご相談を。

    投稿者プロフィール

    山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
    山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」行政書士
    ◎主な業務内容:
    相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行

    山梨県甲府市の行政書士です。
    高齢化社会を元気に生きる社会に。
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