[事例]遺言で後妻と後妻の子供だけに財産を残したい
1、事例
㋐先妻との間に子供が1人いる。後妻との間に子供が2人いる。
㋑先妻は勿論、先妻の子供とも長年会ってなく疎遠なので、先妻の子供に相続させたくない(先妻の子供に遺留分があるのは承知済)。
㋒相談者の男性が死亡すると相続人は後妻、後妻の子供2名に先妻の子供。
遺産分割協議は揉めること必至。
調停、審判に持ち込まれ、法定相続分による財産分けになると、例えば実家が共有になるなどの不都合が発生するリスクがある。
㋓相続財産は実家、預貯金。遺言書でこれらの財産を後妻、後妻の子供に相続させたい。
2、遺言書作成
生前に遺言書を作成しておけば、遺産分割協議は必要ありません。
その際は公正証書遺言で遺言書を残すことをお勧めします。
公正証書遺言は、遺言者が相続などについての自分の意思を「公証人」に口授。
証人2名の立ち合いの下、法的な効力を備えた公的な文書(公正証書)として作成してもらったものです。
証明性、有効性が高く、かつ法的な執行力をも備えている点で、後々のことを考えると何かと安心です。
なお、前妻の子供に一切相続させない、遺留分を侵害する内容の遺言書でも、それをもって遺言書が無効になることはありません。
なぜなら、あくまでも「遺留分」は相続人が最低限の財産を受け取ることができる「権利」であり、遺言書自体を無効にするものではないからです。
別の書き方をすると、「遺留分が侵害される遺言書が作られること」の対応策として「遺留分侵害額請求権」について規定しているともいえます。
3、遺言執行者を指定する
「公正証書遺言」で「遺言執行者指定」だと、金融機関の手続きで必要なものは
①亡くなった方の戸籍謄本
②遺言執行者の印鑑登録証明書
③銀行所定「相続に関する依頼書
④遺言書
⑤亡くなった方の通帳、キャッシュカード
などで足ります。
また、相続登記も遺言執行者が単独でできます。
遺言執行者を指定しておくと、相続手続きをスムーズに行うことができるのが最大のメリットです。
ただし、遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない(民法1007条第2項)とあり、遺言執行者には遺言の内容を他の相続人に通知する義務があります。
「前妻の子供」にも通知しなければなりません。
連絡しない場合、後日遺言執行者が損害賠償を請求されてしまう可能性があります。
つまり、この時点で「前妻の子供」は父親の死亡を知ることになり、遺留分侵害額請求権を行使することができます。
4、前妻の子供が「遺留分侵害額請求権」を行使した時に備えて
上の事例の場合、前妻の子供の遺留分は1/6×1/2=1/12となります。
遺留分に反する遺言書は直ちに無効とはなりませんが、前妻の子供が「遺留分侵害額請求権」により1/12分の金額を求めることができるので、それに備える必要があります。
例えば、
①あらかじめ、相続財産の預貯金から「遺留分侵害額請求権」を行使された際の金額を別に確保しておく
②生命保険金から支払う
などが考えられます。
もっとも、「遺留分侵害額請求権」は必ず行使されるとは限りません。
前妻の子供が意思表示を示さなければ、遺言書通りの財産分けが可能となります。
5、まとめ
遺留分は、亡くなった方の兄弟姉妹以外の近しい関係にある法定相続人に最低限保障される遺産取得分であり、遺言によっても奪うことはできませんが、相続させたくない相続人に渡る遺産を減らすために「あえて」遺留分を侵害する遺言書を作成する方法もあります。
なぜなら、遺留分の金額は法定相続分の金額より低い(通常は法定相続分の1/2)ので、結果的に渡る財産が少なくなるからです。
将来の相続人同士揉めることを避けるために、できるだけ早い時期に遺言書の作成を検討しましょう。
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