親の介護でお金をもらってもよい?

「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」(民法第752条)とされているので、結婚すれば夫または妻も「扶養義務者」となります。

ただ、この「扶養」とは「サポート」に近い意味で「義理の親の介護」まで含まれないとされています。

なので、親の介護をする対価で報酬をもらうのは決して理屈に合わないことではありません。

(1)介護を受けている親本人がお金を払う

お金の払い方としては①定期的にお金を払う②将来の約束として、遺言書にて特定の財産を遺贈するが挙げられます。

(2)他の兄弟からお金を受け取る

「自分は介護をサポートできないから」と介護をしてくれる兄弟姉妹に対しお金を払うこともあります。

親の介護を理由にお金を受け取っても、生活費の範囲内なら贈与税はかかりません。

ただし、たとえ扶養義務者間の贈与だったしても、贈与の内容や金額によっては、贈与税がかかる場合があります。

親の明確な合意を得ていないにもかかわらず、親の介護していることの対価として親の預貯金を勝手に引き出すことは違法です。

また、たとえ親の同意を得ていたとしても、親が認知症などで判断能力を失っている場合は、後日「同意があった」と認定されない恐れがあります。

親の認知症対策として以下の事項を挙げることができます。

(1)遺言書の作成

介護をしてくれた方に確実に遺産を譲りたい場合は、遺言書を作成しておくことです。

「寄与分」「特別寄与料」などの制度が用意されてますが、遺産分割協議での相続人全員の同意を要するなど、確実ではありません。

(2)家族信託

「家族信託」は、所有権を「財産権(財産から利益を受ける権利)」と「財産を管理運用処分できる権利」とに分けて、後者だけを子供等に渡すことができる契約です。

例えば

㋐委託者&受益者:父親(母親はすでに死亡しているものとする)

㋑受託者:子供

㋒信託財産:実家、預貯金

㋓信託終了事由:父親の死亡

㋔帰属権利者:子供

にしておけば、親が認知症になったとしても、入院、施設入所費に充てるために実家を売却したりできます。

(3)生前贈与

生前、介護をしてくれる方に、資産を譲れば介護の対価としてその都度、お金をあげる必要がなくなります。

「贈与後、介護をしてくれなくなるのでは」と不安なら「負担付き死因贈与契約」があります。

例えば「私が死ぬまで介護を続けてくれたら財産を〇〇円あげます」とかの条件付き贈与契約です。

遺言と異なり、相手の同意がないと契約を変更できない。また、介護しないと財産が貰えないことから、お互いにとって安心感があります。

(4)任意後見契約

「任意後見契約」とは、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、予め「任意後見人」を選任することを内容とする契約です。

任意後見人は、財産の管理や身上監護を代理します。

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任意後見契約

「任意後見契約」とは、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、予め「任意後見人」を選任することを内容とする契約です。

投稿者プロフィール

山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」行政書士
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行

山梨県甲府市の行政書士です。
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