[事例]「父の認知症が銀行に知られ預金口座凍結…」どうすればよいか?
1、事例
夏休み帰省したら、実家が大変な事態に…。
父の認知症が進んでいる矢先、何カ月にもわたり、ATMでお金をおろすのにバタバタして、何度も銀行員に問い合わせてたら、いつの間にか銀行口座が凍結されていました。
2、成年後見の申し立て
家庭裁判所に申し立てをすることにより後見人を選任。後見人が本人に代わって年金の管理や必要な資金の引き出しを行うことができます。
しかし、成年後見制度は
①家族が親族の就任を希望しても、必ずしも希望が叶うとは限らない
②専門家が就任した場合、毎月ある程度の費用(報酬)がかかる
③一度利用すると死亡するまで止めることができない
など、使い勝手が悪い所がいくつかあります。
「成年後見制度」の利用は「義務」ではありませんが、認知症発症後、年金を引き出すには「ほぼ」唯一の方法といえます。
できればそこまで追い込まれない内に対策を立てておきたい所です(終活)。
3、そもそも銀行が口座を凍結する理由:名義人の死亡
三井住友銀行HPによると、口座が凍結される条件として
①債務整理の対象になる場合
②口座が不正取引に利用された場合
③名義人が死亡した場合
④名義人が認知症であると認められた場合
とあります。
その後、それぞれ理由が書いてありますが、①②は今更何も説明する必要はないとして、③については「不要なトラブルを避けるため」とあります。これは、例えば銀行が相続人の一人に亡くなった方の口座預金を全額支払った後に、後から来た相続人とトラブルになるのを避ける為、を意味します。
しかし、民法第478条は「受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する」と定めてます。
無権限者のATMからの引き出しについて同条の適用を認め、銀行の面積を認めている(最高裁平成15年4月8日)なら、銀行が窓口に手続きに来た者が「相続人であること」を調べた上で、亡くなった方の口座預金を全額支払ったなら「善意・無過失」といえ、銀行は免責されるのでは。
そのような判例がないので「自己防衛」として凍結するんでしょうけど…。
また、令和元年に民法改正。「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(第909条の2)が認められたことにより、銀行が口座を凍結すること自体法律の定めがなくても、「事実上」後押ししたとも言えます。
銀行が口座の名義人が亡くなったことを知れば口座を凍結する、は今後も続くでしょうね。
(あくまでも「私見」です)。
※参考:「三井住友銀行HP」
4、そもそも銀行が口座を凍結する理由:名義人の認知症
「三井住友銀行HP」でも、「認知症による口座凍結の場合、解除するには成年後見制度を利用する他ありません」と記してます。
最近では高齢者に対する詐欺が横行。
銀行が「高齢者による1日の出勤限度額」を制限しているのも頷ける。
同じ三井住友銀行が、生前の対策として、予め登録した代理人が、本人の代わりに出金することができる「人生100年応援信託」を設けてますが、本人が認知症になった後に「家族が代わって」の同様の制度を設けるのは、本人の意思表示が確認できない以上難しいでしょうね。
※参考:「三井住友銀行HP」
※参考:「三井住友銀行HP「人生100年応援信託〈100年パスポート〉」
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投稿者プロフィール

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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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