離婚後の氏と戸籍
1、離婚後の氏
離婚後の氏がどうなるのかは、婚姻のときに氏を改めたかどうかによります。
(1)婚姻により氏を改めなかった場合
婚姻により氏を改めなかった。つまり、結婚後もそのままの姓を名乗っていた場合、離婚をしてもそのままの氏を名乗ることになります。
なので、氏に関する手続は必要ありません。
(2)婚姻により氏を改めた場合
婚姻により氏を改めた。つまり、結婚後は配偶者の姓を名乗っていた場合、離婚をすると原則として婚姻前の氏(旧姓)に戻ります。
これを「復氏」といいます。
ただし、「婚氏続称の届け出」、「氏の変更許可の申立て」によって、離婚後も婚姻中の氏を名乗ることが可能です。
①婚氏続称の届け出
離婚の日から3ヵ月以内に夫婦の本籍地または届け出人の所在地の役所に「婚氏続称の届」を提出すれば、離婚後も婚姻中の氏を名乗ることが可能です。
②氏の変更許可の申し立て
離婚後3ヵ月以上経過してから婚姻中の氏を名乗りたいと思った場合、家庭裁判所に対し「氏の変更許可」(戸籍法第107条1項)を申し立てます。
ただし、「氏の変更」が認められるためには、「やむを得ない事由」が必要です。
2、離婚後の戸籍
(1)あなたが筆頭者である場合
あなたが戸籍の筆頭者であり、婚姻により氏を改めなかった場合、離婚後も戸籍に変動はなく、そのままの戸籍にとどまります。
なので、特別な手続は必要ありません。
元配偶者の欄には、元配偶者の戸籍の移動が記され、名前欄の前に「除籍」と明示されます。
(2)婚姻中は配偶者の戸籍に入っていた場合の戸籍
婚姻中、配偶者の戸籍に入っていた場合は、離婚をすると筆頭者の戸籍から除籍されます。
除籍される方は、婚姻前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを決めなければなりません。
①婚姻前の戸籍に戻る(復籍)
離婚によって旧姓に戻った人は、原則として婚姻前の戸籍に戻ります。これを「復籍」といいます。
婚姻前の戸籍から父母が別戸籍へ転籍している場合、転籍後の戸籍に入ることになります。
②新しい戸籍を編製する
新しい戸籍を作る場合、本籍地を決める必要があります。
一般的に、離婚後生活する住所を本籍地にすることが多いようですが、特に「どこにしなければならない」との決まりはありません。
3、子供の氏と戸籍
(1)子供の氏
父母が離婚しても、子供の氏は当然には変更されません。
つまり、離婚によって子供の親権者が旧姓に戻った場合も、何も手続をしなければ子供の氏は婚姻中の氏のままです。
この場合、親権者と子供の氏が異なることになります。
また、親が「婚氏続称の届け出」をした場合でも、「婚姻中の氏」と「続称の手続をとった氏」は、法律上、別の氏とされます。
なので、呼び方は同じであってもその親と子の氏は異なることになります。
(2)子供の戸籍
子供の戸籍は、自動的に親権者である親の戸籍に移動しないため、手続をしなければ婚姻中の戸籍のままです。
子供と親の氏が異なる場合、子供は親の戸籍に入ることができません。
つまり、子供の親権者が旧姓に戻った場合、子供の氏を自分と同じ氏に変更しない限り、自分と同じ戸籍に入れることはできません。
この場合、家庭裁判所に「子の氏の変更許可(民法第791条)」を申し立て、子供の氏を自分の氏と同じにする必要があります。
そして、氏の変更後、市区町村役場に入籍届を提出することで戸籍変更ができます。
なお、離婚後に復籍し婚姻前の戸籍に戻るケースで、親がその戸籍の筆頭者でない場合、子供が氏を変更しても復籍した戸籍には入りません。
この場合、子供の親を筆頭者とする新しい戸籍を作る必要があります。
理由は、戸籍は夫婦および夫婦と氏を同じにする子供ごとに作られることになっており(戸籍法第6条)、親が復籍した戸籍の筆頭者がその親の両親(子供にとっては祖父、祖母)だと、「親、子供、孫」の三世代の戸籍になってしまい、戸籍法に反してしまうためです。
投稿者プロフィール
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山梨県甲府市の行政書士です。
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