特別寄与料の計算方法
1、特別寄与料
「特別寄与料」とは、相続人でない人が亡くなった被相続人に対して特別に貢献した場合に、その貢献に見合ったものとして支払われる金銭のことをいいます。
2018年民法改正により、特別寄与料制度が創設。被相続人に対して介護や看護などで貢献した親族は、相続人でなくても財産を得られるようになりました。
手続き上は、遺産を相続する相続人に特別寄与料として金銭の支払いを請求することになります。
◎要件(民法第1050条1項)
①被相続人の親族であって相続人でない人
②被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をした(療養看護型)
③被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした(家事従事型)
◎具体例:長男の妻が被相続人の介護をしていた
2、特別寄与料の計算方法
民法では「家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」と規定されているだけで(民法第1050条3項)、明確な基準はありません。
(1)療養看護型
第三者が療養看護を行った場合の日当額×療養看護の日数×裁量割合
㋐第三者が療養看護を行った場合の日当額:介護保険制度で定められる介護報酬基準額を参考にする
㋑裁量割合:専門職ではない親族が療養看護を行ったことを考慮したもの。0.5~0.8の割合をかけます
(2)家事従事型
特別寄与者が通常受けるべき年間給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数×裁量割合
㋒特別寄与者が通常受けるべき年間給与額:
国の統計資料である賃金センサスから、家業と同種同規模の事業に従事する同年齢層の賃金を参考にする。
㋓生活費控除割合は:
給与を受け取らない代わりに生活費を負担してもらっていた場合の生活費相当額の割合。
実額から計算するほか、交通事故の生活費控除率を参考にしたり、0.5としたりすることもある。
㋔裁量割合:㋑と同じ。
3、特別寄与料の請求手続き
特別寄与料の請求手続きには、次の二つの方法があります。
(1)遺産を相続する相続人と直接交渉する
(2)家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てる
※参考:裁判所HP「特別の寄与に関する処分調停」
なお、特別寄与料の金額は、遺産総額から遺贈の価額(遺言によって分け与えられた遺産の価額)を除いた金額を超えることはできません(民法第1050条4項)。
4、まとめ
「特別寄与料」は、遺産を相続する相続人と直接交渉することになりますが、お金が絡むことなので、激しい抵抗が予想されます。たとえ、家庭裁判所による調停、審判で認められたとしても、その後の親族との関係(もしかしたら夫も含む?)は冷え込む事になるでしょう。
被相続人が生前の介護等に対し感謝の気持ちを持っているのなら、それを金銭に換算。「遺贈」の形で遺言書に記載してあげるとよい。「感謝の気持ちのお返しの実現」のために、弁護士等の専門家に相談を。
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