相続放棄したのに債権者から請求が来たら
1、相続放棄すれば支払い義務はない
相続放棄をすると、相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされ、亡くなった方の権利や義務を一切受け継がないことになります。
なので、相続放棄をした人は、亡くなった人の借金について債権者から請求を受けたとしても支払う義務はありません。
2、相続放棄後、債権者から請求がきたら
(1)「相続放棄をした」旨伝え、「相続放棄申述受理通知書」を提出する
相続放棄をしても、債権者に通知はいかないので、債権者が相続放棄をしたことを知らない可能性は十分有り得ます。
その場合「相続放棄受理通知書」を債権者に示すことで、相続放棄が行われていることを証明します。
3、相続放棄しても借金を支払わなければならない場合
(1)亡くなった方の連帯保証人だった
相続人自身が亡くなった人の連帯保証人となっている場合、自己の連帯保証債務として借金を支払う義務を負います。
なので、相続放棄をしても、借金を支払わなければなりません。
(2)家庭裁判所の正式な手続きを経ていない
相続放棄をするためには、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。
ただ、他の相続人に「相続放棄する」旨伝えただけでは、正式な相続放棄ではありません。
(3)「相続分の譲渡」をした
「相続分の譲渡」とは、遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分を移転することをいいます(民法第905条)。
相続分の譲渡は、相続人という地位の譲渡なので、当事者間では債務も移転しますが、譲渡人は対外的に債務を免れません。
(4)遺留分の放棄をした
「遺留分の放棄」とは、亡くなった人の生存中に、亡くなった人の住所地の家庭裁判所に対して申立てをすることで、あらかじめ遺留分を放棄することができる制度のことです。
「相続放棄」とは全く別の制度です。
従って、遺言によって全財産が他の相続人に相続されることになったとしても、遺留分放棄者である法定相続人は、亡くなった人の負債を相続することになります。
(5)単純承認が成立してしまった
相続人が相続財産の全部又は一部を処分した等は、単純承認、遺産を相続したものとみなされます。
たとえ、家庭裁判所に相続放棄の申述を行って受理された場合でも、実際には相続放棄の要件を満たしておらず、相続放棄が無効だと判断される場合があります。
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