[事例]子供がいない夫婦。夫の死亡後妻が実家に居住するとしても、将来は夫の兄弟に実家を相続させたい
1、事例
◎事例
㋐夫婦には子供がいない。
㋑夫(X)には弟と妹がいる。
㋒自分(X)が死亡後、最終的に重要な財産(実家)は弟(Y)に相続させたい。
その一方で妻が住居、生活のことで困らないよう、配慮してあげたい。
2、遺言書を残さないと…
夫が遺言書を残さなければ、夫の死後、法定相続人は妻、夫の兄弟(次男、長女)。
法定相続分は妻:3/4。次男、長女:合計1/4。
他の財産(預貯金など)がほとんどなく、主要な財産が実家のみですと、円満に解決するためには、妻、次男、長女の共有となる可能性が高いです。
たとえ妻がそのまま実家に居住することができたとしても、このまま共有名義を維持すると
㋐建物の賃貸借契約の締結のような「管理行為」は過半数の同意
㋑不動産の売却のような「変更行為」は全員の同意
が必要と、窮屈なことになります。
また、何等かの理由で共有者同士の仲が悪くなれば、共有者の誰かが認知症等、判断能力が失われれば、何も進まなくなります。
さらに、それぞれに相続が発生すると、実家のの共有者が増え、更に事態が複雑になります。
3、遺言書を残したとしても…
夫が「すべての財産を妻に相続させる」旨の遺言書を残せば、夫の兄弟(次男、長女)には遺留分がないので、妻は安心して実家に居住することができます。
しかし、妻が亡くなれば、思い出深い実家は妻の兄弟に…。
遺言書は直後の財産分けしか記載できないため、合わせて、将来「妻に「妻が亡くなった時は夫の兄弟である次男に実家を遺贈する」旨の遺言書を書いてもらう」旨、約束しても、あくまでも約束。妻がそれを実行する保証はありません。
4、配偶者居住権
「配偶者居住権」とは、亡くなった人が所有していた実家等の建物に、亡くなった人の配偶者が住み続けられる権利のことをいいます。
夫が遺言書にて
㋐遺言者の有する次の建物(実家)の配偶者居住権を遺言者の妻に遺贈する
㋑遺言者の有する次の建物(実家)の負担付所有権を遺言者の弟に遺贈する。
旨記載すれば、配偶者は、原則として死ぬまで実家に無償で住み続けることができます(民法1028条1項)。
建物に配偶者居住権を設定した場合、「将来実家は弟に相続させたい」願いが叶うだけでなく、配偶者と所有者の間で、「配偶者は「配偶者居住権の価値」を、所有者は「所有権の価値-配偶者居住権所有権の価値」を得る、というように、相続分がバランスよく各相続人に配分、遺留分問題のリスクが緩和されます。
5、家族信託
自宅など重要な財産について家族信託を利用。最終的に夫の弟が相続できるようにする
その他、妻の老後の金銭についても、家族信託を利用することにより、最終的に夫の弟または夫の妹が相続できるようにする。
これにより、夫の死後も妻は引き続き自宅に住むことができるようになり、妻の死後、夫の弟が自宅を相続することが可能となります。
◎自宅など重要な財産
㋐委託者&受益者:夫
㋑受託者:夫の弟
㋒第二受益者:妻
㋓信託財産:自宅など重要な財産
㋔信託終了事由:夫及妻の死亡
㋕帰属権利者:夫の弟
◎妻の老後の資金
㋐委託者&受益者:夫
㋑受託者:夫の弟
㋒第二受益者:妻
㋓信託財産:金銭(妻の老後資金のため)
㋔信託終了事由:夫及び妻の死亡
㋕帰属権利者:夫の弟及び夫の妹
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投稿者プロフィール

- 行政書士
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◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
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