[事例]越境物を放置しておくと…:時効取得

◎事例

隣家の塀や屋根の庇が土地の境界線を越えてこちらの土地に越境していたことが分かった。

しかし、隣人とは良好な関係なので「今すぐ撤去しろ」と下手に揉めるつもりはない。

そうはいっても、このまま放置してもよいものか不安である。

将来に不安を残さないために、どうしたらよいか?

「越境物」とは、土地の境界線を越えて、隣地の所有地にはみ出している物のことをいいます。

越境物の具体例として、塀、屋根の庇、樹木の枝、物置などが挙げられます。

越境物は、例えば、親が亡くなり、土地建物を相続。改めて土地の測量をした際に発見することがあります。

隣人が建物の増築、塀などを設置する際に、土地境界線の目印を確認しなかったことなどが原因です。

20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(民法第162条1項)

10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する(同2項)

たとえ、隣人が越境物を増床、設置した際、土地境界線の目印を確認しなかったなどの理由で「過失なし」といえなくても、20年間「平穏に」「公然と」占有していれば、その越境部分を時効取得されてしまう恐れがあります。

(1)所有権に基づく妨害排除請求権

相手に対し、越境物の撤去を要求することができます。相手が早急に撤去しない場合、自ら撤去。相手に撤去費用を請求することもできます。

なお、樹木の枝や根が越境した場合ですが、2023年度民法改正。

所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないときは、自ら枝を切り取ることができるようになりました(民法第233条)。

上に書いたように、越境物を放置すると、時効取得されてしまう恐れがあります。

何らかの形で時効取得されるのを阻止しなければなりませんが、一つの方法が、所有者の「承認」(民法第152条)を意味する「越境物の覚書」です。

◎「越境物の覚書」の内容

①越境物が境界線を越境している事実を依頼者、隣地所有者がお互いに確認する

②将来、越境物の所有者が建て替えをする際、自己負担で越境の解消をする

③土地を第三者に売却する際、新たな所有者に契約内容を継承する

④建て替えを行う時まで、越境物の撤去を猶予する

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越境物の覚書

「越境物の覚書」とは、越境物問題の解決に関する内容が記された合意書です。

越境した枝を自ら切除できる(民法改正)

◎改正民法第233条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる(1項)

「筆界未定」でできないこと

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山梨県甲府市にある「あきやま行政書士事務所」
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