住所で不動産を特定してしまった遺言書の有効性
1、住所と地番
「地番」とは、法務局が定めた住所です。
「住居表示」とは、住居表示法に基づいて市町村が定めた住所です。
地番と住居表示番号は定めた機関が違う、全く別の番号です。
不動産は地番によって登記されているため、登記簿を調べるときは、地番で検索します。
2、住所で不動産を特定したら?
住所で不動産を特定=遺言全体が無効、ではないです。
ただ、一見住所さえ書いていれば不動産は特定できそうだと思うでしょう?。
しかし、実際はそうではありません。
なぜなら、現実の問題、近隣で同じ住所を使用する住戸が並ぶ場合もあるからです。
たとえば、分譲地で区画分けされたエリアの建売不動産の場合、お隣さん同士が同じ住所となることもあります。
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同じ住所の家が複数存在する可能性がある以上、100%住所を使って不動産を特定することができません。
3、不動産は「地番」と「家屋番号」で特定する
不動産の特定をする場合には、土地は「地番」建物は「家屋番号」で特定します。
これらはそれぞれの不動産につき割り振られる通し番号で、同じ番号を持った不動産はこの世に存在しません。
なので、自筆証書遺言書の不動産の項目に、地番、家屋番号ではなく住所を記載すると、法務局で「その遺言書では物件が特定できないので相続登記は受理できません」と言われ却下されてしまうこともあります。
4、最高裁判例
㋐遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく
㋑遺言者の真意を探究すべきものであり
㋒遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、
㋓遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。
(最高裁昭和58年3月18日)
5、遺言書を有効にするには
上の最高裁の判例の通り、住所を記載した遺言書でも有効、相続登記を可能にするには、遺言者の真意を客観的に示すために、不動産を特定する必要があります。
つまり、特定するための他の資料、例えば
①税務関係の証明書
②同じ市内に他に不動産を所有していないことを証明するための名寄帳
等を添付し、法務局にて、登記官と調整を行い受理してもらうしかありません。
相続登記自体も含め、司法書士の先生に相談してみてください。
投稿者プロフィール
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
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