相続放棄ができない、認められない場合
1、「単純承認」が成立
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は相続人は「単純承認」したものとみなされます(民法第921条1項)
◎具体例
①相続財産の使い込みや譲渡
②預貯金の払い戻しや解約
③遺産分割協議に参加
④不動産、自動車等を名義変更
等
2、亡くなった方の銀行口座からお金をおろしたら「単純承認」?
単純に、亡くなった方の銀行口座からお金をおろした=即「処分行為に該当」=結果「相続放棄できない」、ではありません。
(1)葬儀費用
亡くなった方のの身分相応で、一般的に許容される範囲内で葬儀を行った場合の費用を、亡くなった方の相続財産から支払っても「単純承認」には該当しません。複数の裁判例があります。
(2)入院費用、介護費用
これに対し、亡くなった方の銀行口座からお金をおろして入院費、介護費等の支払いに充てると、相続財産に手を付けたということで「処分行為」に該当。「相続放棄」が認められなくなる可能性があります。
(3)「未支給年金」を受け取る
「未支給年金」とは、亡くなった年金受給者が「受給する権利があるが、受給できていない年金」です。
例えば、4月に亡くなった場合、4月分の年金は通常ですと6/15に振込まれますが、この分は「未支給」となります。
未支給年金を受け取る権利について判例は「相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたもの」とされています(最高裁平成7年11月7日)
つまり、相続人は「亡くなった方の「未支給年金受給権」を相続する」のではなく「相続人固有の権利として、未支給年金の受給権を有している」という意味ですので、相続放棄をした相続人でも、「未支給年金」を受け取ることができます。
3、「単純承認」とみなされるには
相続財産を処分による単純承認を擬制」(結果、相続放棄できない)が適用されるためには
㋐相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分
㋑少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえて処分
したことを要する (最高裁昭和42年4月27日)
この判例を素直に読めば、「単純承認」とみなされるためには「故意」もしくは「重大な過失」が必要で、単に「知らない」だけなら「相続放棄」が受理される可能性が高い、といえます。
とはいえ、「亡くなった方のお金をおろす」等、どちらとも解釈できる、紛らわしい行為はしない方が無難。
相続開始時は何かと大変でしょうけど、迷ったら是非専門家にご相談を。
投稿者プロフィール
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
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