認知症の妻を守れる「受益者連続信託」
1、事例
◎事例:
[家族]
本人(相談者)(甲)
認知症の妻(乙)
長女(A)
長男(B)
[財産]
実家3000万円
預金2000万円
実家は両親の2人暮らし。
長男、長女は独立。それぞれ家庭を持っている
2、懸念材料
本人が死亡後、自宅を売却。そのお金で認知症が酷くなった妻を施設や介護付き有料老人ホームに移すのも一つの選択欄。しかし…
㋐遺言書で妻に財産を残しても、不動産の売主になれないし、預金をおろすこともできない
㋑遺言書を残さなかったら妻、長女、長男が相続人。遺産分割協議をすることになりますが、認知症の母親は参加できない。
3、「負担付遺贈」の遺言書を残せば…
そこで、財産を母親に残さない遺言書を残すことを考える。
以下の「負担付遺贈」の遺言書もその一つ。
下記不動産と金融資産を長女であるA(生年月日)に、以下の負担をかけることを条件に遺贈する。
Aは、母乙(生年月日)に対し、乙が生存中、その生活費として〇〇万円を毎月支給すること。
しかし、この「負担付遺贈」にも懸念材料がある
①長女が本当に約束を履行する保障がない。
②本人が生きている内に成否を確認できない。
③長女が死亡後、長女の相続人にこの義務を継続させることができない。
④長女が死亡すると、妻の世話のための遺産も相続人にいってしまう
4、家族信託
そこで…
委託者(財産を託す人):甲
受託者(財産を託され管理する人):A
受益者(託された財産から実質的な利益を得る人):甲
第2受益者:乙
信託対象財産:実家、預金
終了原因:甲&乙の死亡
帰属権利者:A、B
①「分別管理」は信託法で義務付けられているので、受託者であるAが厳格に分別管理ができるよう「受託者用通帳」を作っておく。
②受益者代理人や信託監督人がAの行動をチェックすれば乱用の危険がない。
③家族信託なら、Aの後に第2受託者(B)を決めておけば、万一Aが死亡したとしてもBが乙の財産管理を継続できる。
④Aが管理している信託財産は「乙のために使われる財産」であり、Aの個人財産ではない。
故に、Aが死亡してもAの相続人に信託財産がいくことはない。
5、まとめ
①「遺言書」と異なり、相談者(自分)が亡くなった後のことまで決められる
②信頼している親族がいることが前提ですが、家庭裁判所、専門家等、「他者」が絡む「成年後見制度」を使う必要がない
徹底した「認知症対策」に秀でている「家族信託」の醍醐味ともいえますね。
投稿者プロフィール
-
◎主な業務内容:
相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
高齢化社会を元気に生きる社会に。
体の不自由なお年寄りが安心して生活出来る社会を作りたい、
困っている方の力になりたい。
皆で応援し、安心して暮らせる社会を作りたい。
そんな願いを胸に日々仕事に従事しています。
当事務所への「お問い合わせ欄」は「こちら」
お気軽にご相談下さい。
最新の投稿
- 相続2024年12月22日[事例]予備的遺言と遺言執行者の選任
- 相続2024年12月22日遺言執行者が相続財産を開示しないときは?
- 登録、許認可、契約2024年12月22日医薬品のネット販売(特定販売)
- 登録、許認可、契約2024年12月21日医薬品店舗販売業