離婚の公正証書
1、はじめに
協議離婚の際「離婚協議書」を作成します。
離婚協議書も契約書ですが、合意内容を記載した証拠に過ぎず、仮に一方が合意した約束事項を破ったとしても、必ずしも約束の履行を強制できません。
離婚協議書を公正証書化しておくと、例えば養育費の支払いが滞った場合、強制的に支払ってもらうことが可能となります。
この「離婚公正証書」があれば裁判を起こさずとも相手の給与や預貯金などを差し押さえ、支払いを強制させることができます。
2、公正証書を作るメリット
(1)証拠能力が高い
公正証書は公証人が双方の意思を確認し、署名、捺印するため信用性が高くなります。
そのため、後で「言ってない」「聞いてない」を防ぐことができます。
(2)強制執行ができる
(3)原本がなくならない
公正証書の原本は、公証役場に原則として20年間保管されます。
そのため、紛失、盗難、偽造等の心配がありません。
3、公正証書を作るディメリット
(1)作成費用がかかる
(2)作成に手間がかかる
公正証書は公証人との相談、打ち合わせから、当日公証人がが内容を確認、読み上げすることから、何度も公証役場まで足を運ばなければなりません。
(3)相手が公正証書にすることに反対する恐れがある
特に相手が支払いをする側だと、公正証書の作成を拒否されてしまうことがあります。
また、当初は同意していたとしても公正証書化する直前になって「公正証書なんか作らなくても、ちゃんと支払いはするから」のようなことを言われてしまい躊躇することもあるでしょう。
4、公正証書作成の流れ
(1)夫婦間でよく話し合う
↓
(2)公正証書の原案である「離婚協議書」作成
↓
(3)公証役場で相談
↓
(4)作成日の予約
↓
(5)公証役場に訪問。「離婚公正証書」の作成
5、公正証書作成に必要な書類
①戸籍謄本
②離婚協議書
③不動産の登記簿謄本および固定資産税納税通知書(不動産がある場合)
④年金分割のための年金手帳等(年金分割をする場合)
⑤その他(必要に応じて、車検証、保険証書等)
6、公正証書作成の費用
公正証書にかかる手数料の金額は、「公証人手数料令」によって下表のように定められています。
協議書に記載された合意の金額により、手数料が異なります。
法務省令で定める縦書きの証書が4枚(横書きの場合は3枚)を超えると、1枚あたり250円の費用がかかります。
また、年金分割の合意についても公正証書を作成したい場合、離婚の公正証書手数料とは別に11000円の費用が発生します。
◎参考:「全国公証人連合会HP」
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43000円に超過額5000万円までごとに13000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 95000円に超過額5000万円までごとに11000円を加算 |
10億円を超える | 249000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算 |
7、公正証書に記載した方がよい内容
公正証書に記載する内容は、後から「言った」「言ってない」がないように、2人で決めた全ての事項を記載しましょう。
具体的には、
①離婚への合意
②親権
③養育費
④慰謝料
⑤財産分与
⑥年金分割
⑦面会交流
⑧連絡先の通知義務
⑨清算条項
⑩強制執行承諾約款付公正証書作成への合意
投稿者プロフィール
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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