離婚契約の公正証書
1、はじめに
協議離婚では、離婚するための条件を夫婦の話し合いで決めることが基本となります。
家庭裁判所による調停離婚と異なり、夫婦で合意した養育費、財産分与、慰謝料等の支払い条件を記録し確定する公文書が自動的に作成されることはありません。
そのため、協議離婚に関して(元)夫婦で合意した事項を公文書にして残したければ、自分の意思で「離婚公正証書」の作成を進めなければなりません。
2、「離婚契約公正証書」の強制力
協議離婚の際、離婚した後に一方から他方へお金(養育費、財産分与、慰謝料など)を支払う約束がなされたとします。
仮にその約束が守られないときは、受け取る側は、裁判を起こさなければなりません。しかし、裁判には一定程度の時間がかかりますし、訴訟の追行を弁護士に依頼すると、その依頼費用もかかることになります。
離婚時にお金を支払う契約を公正証書にて作成しておけば、仮にお金の支払い契約が守られなかったときに、お金を受け取る側は、裁判をしなくても、お金を支払う約束をした側の給与等の財産を差し押さえること(強制執行)が可能になります。
3、「離婚契約公正証書」の内容
(1)財産分与
結婚していた期間中に夫婦で協力して作りあげた財産は夫婦の共同財産となり、離婚時に存在しているものは、二人の間で分けて清算します。
そして、この清算によって夫婦の一方から他方へお金が支払われたり、財産が引き渡されることを「財産分与」といいます。
財産分与において、共同財産は夫婦で半分ずつに分けることが平等であるとしています。
(2)年金分割
将来に受給する予定の厚生年金について、結婚していた期間に夫婦で積み立てた年金記録を離婚時に夫婦で分けることが可能になります。
これを「年金分割」といいます。
(3)親権者
婚姻後、子供を育てるときは、父母が共同して子供を養育、子供の権利を代理することで守る仕組みになっています(共同親権)。
父母が離婚することになると、子どもの親権者を、離婚の届出時に父母のどちらか一方に定めなければなりません(単独親権)。
協議離婚では、父母の話し合いで離婚後の子どもの親権者を定めることができます。
そして、協議離婚の届出時には、父母間のすべての子供について親権者を指定することが法律上で義務付けられています(民法819条1項)
つまり、子供の親権者が決まらない限り、協議離婚の届出できません。
(4)養育費
子供が成長し経済的に自立できるまでの間は、父母に子どもを扶養する義務があります。
父母が結婚して共同生活をしていれば、協力しながら子供を扶養することになります。
ところが、離婚すると父母は別居しますので、子供を引き取って監護する親に対し、他方の親は子どもの扶養にかかる費用の分担金を支払わなければなりません。
この分担金のことを「養育費」と言います。
養育費は、父母の収入、資産などによって、父母の双方にとって公平な分担となるように取り決められることが基本です。
裁判所が作成した養育費の算定表はこちら。
(5)面会交流
離婚により父母の一方が子供を引き取ることで、他方は子供と別居することになります。
別居または離婚しても、法律上の親子関係は変わらないので、別居後も、別居した親は子供と会うことが可能です
この別居、離婚した後に別居親が子供と会うことを「面会交流」といいます。
協議離婚の際の話し合いにおいて、どの程度の頻度で面会交流を行なっていくかだけを父母の間で決めておき、その後に子供の様子、成長などを踏まえて面会を実施していくことになります。
4、「離婚契約公正証書」の作成
(1)公証役場で契約の内容を説明、必要書類を添えて申し込み、予約
↓
(2)予約した日時に(元)夫婦二人で公証役場へ行き、公正証書を完成
↓
(3)公証役場から提示された公証人手数料の支払いと引き換えに、完成した離婚公正証書を受領
5、注意点
公証役場は協議離婚の内容を決める場所ではありません。
夫婦の双方とも「公正証書に書くことについてすべて納得しており、それを契約として守っていきます」という前提がないと、公正証書を作成できません。
「離婚契約公正証書」の詳細は「日本公証人連合会HP」で。
投稿者プロフィール
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相続、終活、墓じまい、遺言書作成、遺言執行、後見、家族信託、ペット法務、民泊、古物商許可、空き家問題、相続土地国庫帰属制度の法務局への相談、申請書作成代行
山梨県甲府市の行政書士です。
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